その後、秘書の反応を待たずに、個室のドアを開けて先に出て行った。
秘書は一瞬呆然としていたが、我に返ると急いで携帯を取り出し、鈴木和香にメッセージを送った:【君、来栖社長はフォーシーズンホテルに泊まっています。私の長年の経験から、彼の部屋番号は必ず1001です。フロントに彼の身分証番号を伝えれば、ドアを開けてもらえます。来栖社長の身分証番号は……】
その後、秘書は一連の身分証番号を鈴木和香に送信し、何か思い出したかのように、さらにメッセージを追加した:【そうそう、君、来栖社長はまた出発すると言っていました。彼の身分証番号を持って各航空会社に問い合わせれば、どの便に乗るのか分かるはずです。私にできるのはここまでです。あとは自分で何とかしてください。】
秘書はこれらのメッセージを送信した後、急いで個室のドアを開け、来栖季雄を追いかけた。
おそらく再び来栖季雄を裏切ったせいで、秘書は彼の顔をまともに見ることができなかった。
君をあれほど愛していた来栖社長が、君を愛していないはずがない。彼がこうして避けて話さないほど、それだけ心の底で気にかけているということ……たとえ何が起きたのか分からなくても、来栖社長がなぜ君を諦めてしまったのか。
しかし、問題を解決するには原因を知る必要がある。この世界で来栖社長を悲しませることができるのは君で、同様に来栖社長を幸せにできるのも君だけだ。
だから、これは来栖社長への裏切りとは言えないよね?実際には来栖社長を助けているんだ……長年失っていた幸せを取り戻すのを手伝っているんだ。
うん、そうだ。彼の幸せを探すのを手伝っているんだ!彼が君と幸せになれば、自分が裏切ったことが発覚しても、君に助けを求めることができる。
秘書は鈴木和香という護符があることを思い出し、ようやく気持ちを落ち着かせ、バックミラーを通して後部座席に座る来栖季雄を見た。
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秘書は来栖季雄を部屋まで送らず、ホテルの入り口で降ろして車で去っていった。
正月で、ホテルの宿泊客は少なく、深夜だったこともあり、一階のロビーには当直の男性フロントスタッフと二人の警備員以外は誰もいなかった。