第662章 携帯の中のメッセージ(12)

言い終わると、鈴木和香は林夏音を避けて通り過ぎ、手を伸ばして化粧室のドアを開けた。

林夏音は鈴木和香の言葉に顔を赤くしたり青ざめたりしながら、少しあごを上げ、立ち去ろうとする鈴木和香に向かって、わざと強調して言った。「そうそう、鈴木和香、言い忘れていたけど、彼らがフォーシーズンホテルで取った部屋は1002号室よ、プレジデンシャルスイートよ。」

鈴木和香のドアノブを握る手が少し震えたが、その後ろ姿は非常に落ち着いていて、まるで林夏音の言葉が自分に向けられたものではないかのように、優雅に立ち去り、高いヒールの靴音だけが響き渡った。

-

撮影現場を出た時には、すでに夕食時で、桜花苑に帰る途中で広東料理店の前を通りかかり、来栖季雄は直接車を店に向けて曲がった。

料理は来栖季雄が注文し、さっぱりした口当たりのものばかりを選んだ。