「やはり林夏音の彼氏はそれだけのお金を出せるということは、それなりの実力があるということよね……」
「彼女の彼氏の実力なんて、お前が心配することか?」来栖季雄は魚の身を箸で挟みながら、骨を取り除きつつ、さらりと言って鈴木和香の言葉を遮った。彼女が続けようとしていた「もしビジネスで敵を作ってしまったらどうするの」という後半の言葉は、喉に詰まったままになった。
鈴木和香は唾を飲み込み、来栖季雄を約5秒ほど見つめた後、やっと彼の言葉の意味に気づき、突然目を輝かせて、顔を少し前に出した。「来栖季雄、もしかして嫉妬してるの?」
来栖季雄は魚の身から視線を鈴木和香の顔に移し、冷ややかに彼女を睨みつけた。「林お嬢さんのような女性に惚れる男に、俺が嫉妬する価値があると思うか?」