第676章 携帯の中のメッセージ(26)

ルーシーの夫を見送った後、鈴木和香はルーシーとソファーに座った。

先ほど入れたコーヒーは冷めていたので、和香は新しく一杯淹れ、自分とルーシーにそれぞれ注いだ。

ルーシーは「ありがとう」と言い、バッグから名刺を取り出して和香に渡した。

和香は両手で受け取り、名刺は英語で印刷されていたが、理解することができた。

ルーシー、31歳、心理カウンセラー。

和香は名刺をしまい、ルーシーに簡単な自己紹介を始めたが、話が終わる前にルーシーは微笑みながら頷いて言った。「あなたのことは全部知っています。」

少し間を置いて、ルーシーは付け加えた。「季雄さんから聞きました。」

ルーシーはコーヒーを手に取り、一口すすった。「誤解を招いてしまい、申し訳ありません。でも安心してください。季雄さんが私を訪ねてきたのは、純粋に仕事上の関係です。」

「うーん...」ルーシーは首を傾げて考えた。「簡単に言えば、季雄さんは私の患者です。」

ルーシーは心理カウンセラーで、来栖季雄は彼女の患者。つまり、季雄の心理が...和香の表情は一瞬で硬くなり、まるで自分の耳にした内容を信じられないかのようだった。

ルーシーは和香の心の中を読み取ったかのように、唇を緩めて微笑んだ。「実はこれは季雄さんのプライバシーで、秘密を守ると約束したんですが、日本には『鈴を結んだ者が解く』というような言葉がありますよね...」

ルーシーは途中で言葉に詰まり、和香は今度は英語で続けた。「The one who tied the bell should untie it?」

「そうです!」ルーシーは大きく頷いた。「あなたがこのことを知れば、きっと季雄さんの助けになると思います。」

和香は今度は何も言わず、ただじっとルーシーを見つめていた。

「私が季雄さんと知り合ったのは5ヶ月前です。その時、夫と車で帰宅途中に彼を見つけました。彼はお酒を沢山飲んでいて、意識もはっきりしていませんでした。夫とは長年の親友で、それで私たちは彼を家に連れて帰りました。」

「彼は酔いが覚めると帰ろうとしましたが、夫が必死に引き止めて、やっと承諾してくれました。」