鈴木和香がクラブに入ると、招待状を差し出し、すぐにスタッフが水晶宮のように装飾された宴会場へと案内してくれた。中は華やかな照明に包まれ、柔らかなピアノの調べがBGMとして流れ、東京都の名家がほぼ全て集まっており、皆が優雅な装いで、知人同士が集まって談笑していた。
鈴木和香はヌードカラーのキャミソールドレスを着ていた。外套をスタッフに預け、クラッチバッグを持って入り口で周りを見渡すと、最後に数人の奥様方と一緒にワイングラスを持って談笑している鈴木夫人の姿に目が留まり、優雅な足取りでハイヒールを鳴らしながら近づいていった。
「おばさま」
鈴木夫人は声を聞くとすぐに振り向き、和香を見つけると親しげに手を伸ばして彼女の手を取った。「和香が来たのね?」
「はい」和香は近くのスタッフが持つトレイからワイングラスを一つ取り、おとなしく鈴木夫人の傍らに立ち、目の前の人々を一人一人紹介してもらった後、すぐにグラスを上げて挨拶を交わした。
鈴木夏美と田中大翔は韓国へ行っていて、今夜のパーティーには参加できなかったが、和香がいることで、夏美ほど派手ではないものの、優雅な雰囲気を醸し出していた。加えて、出演した二本の映画が公開され、高い評価を得ていたことから、奥様方は鈴木夫人に絶え間なく賞賛の言葉を送っていた。
和香は実の娘ではないものの、十数年育ててきた娘であり、このように褒められるのを聞いて、鈴木夫人は嬉しさで顔がほころんでいた。
和香は微笑みを浮かべながらしばらく鈴木夫人に付き添い、その後周りを見回すと、ようやく人々と乾杯して歓談している赤嶺絹代を見つけ、鈴木夫人の耳元で囁いた。「おばさま、椎名おばさんにご挨拶してきます」
鈴木夫人は慈愛に満ちた笑顔で頷いた。
和香は傍らの奥様方に友好的な微笑みを向けて会釈し、「失礼いたします」と一言告げてから、赤嶺絹代のいる方へ向かった。