そして鈴木和香がすぐに続けて言おうとした「私もあなたを丸々十三年間、青春の時間をかけて愛してきた」という言葉は、電話の中のツーツーツーという音によって、喉元で押し殺されてしまった。
なんてこと!
鈴木和香は携帯を思い切りベッドに投げつけた。来栖季雄はいったい何のつもりだ、彼女の電話を二回も続けて切るなんて!
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来栖季雄は再び携帯を投げ捨て、まるで時が止まったかのように、ホテルの部屋で呆然と長い間立ちすくんでいた。そして喜びが潮のように次々と彼の心に押し寄せ、彼の全身を一瞬で飲み込んだ。
来栖季雄は、自分の人生でこれほど興奮し、喜び、幸せを感じたことはないだろうと思った。
あの夜、彼を生きた心地もさせず、今でも思い出すと胸が痛む「あなたに資格があるの?」という言葉は、彼女が送ったものではなかったのだ。