鈴木和香はクリックして、午前中まで自分のことを「おんぶにだっこ女」と罵っていたネットユーザーたちが、今や全員風向きを変えていることに気づいた。
彼女に対する態度は、羨望と嫉妬と憎しみが入り混じったものへと一斉に変わっていた。
「なんてこと、鈴木和香が私の推しと結婚するなんて。」
「鈴木和香は前世で銀河系全体を救ったに違いない、だから今世で私の旦那様と結婚できるなんて!」
「あなたの旦那は妄想だけど、彼女のは本物の旦那よ。一緒に寝れるし、触れるし、足をマッサージしてバッグも買ってくれる……」
「私の旦那がどうしてあんなにイケメンなの?ACR全部買い占めたってこと?」
……
午前中までは誰もが彼女を「おんぶにだっこ女」「恥知らず」「安っぽい」と罵っていたのに、どうして午後になると「前世で銀河系を救った」「人生の勝ち組」「来栖夫人」になったのだろう?
状況の逆転があまりにも急で、鈴木和香は夢を見ているような、とても非現実的な感覚に襲われた。
鈴木和香のウェイボーには次々とフォロワーが増え、コメントや転送が絶えず、手のひらの中でスマホが震え続けていた。しばらくして我に返った彼女は、再び来栖季雄のウェイボーを開いた。
この短い間に、彼の投稿へのコメント数は50万から80万に増えていた。鈴木和香がクリックすると、最もいいねの多いコメントは:【あなたは私の推しです。あなたと結婚したいけど、あなたが幸せなら私も幸せです】だった。
次にいいねが多かったコメントは:【推し、どうして結婚証明書を一つしか見せないの?他の芸能人は二つ見せるって言うのに。】
鈴木和香はここまで読んで、自分が破り捨てた結婚証明書のことを思い出し、思わず口元が緩んだ。来栖季雄をからかってみようという気になり、そのコメントのスクリーンショットを撮って、来栖季雄にダイレクトメッセージを送った:【そうですね、来栖社長、どうして結婚証明書を一つしか見せないんですか?】
鈴木和香が送信ボタンを押すと、来栖季雄が持っていたスマホから「ディンドン」という音が聞こえた。自分のメッセージが届いたことを知り、下唇を噛みながらこっそり目を上げて来栖季雄を観察した。男性の表情は平静で、特に反応はなかった。
30秒経っても、彼女のスマホも静かなままで、彼からの返信はなかった。