第721章 来栖・鈴木夫婦(9)

「来栖季雄、何をするつもり?」鈴木和香は反射的に手を上げて、来栖季雄の首に腕を回した。

来栖季雄は何も言わず、彼女を抱きかかえたまま周囲を見回し、近くにあるショッピングモールが特別に設置した休憩用の椅子を見つけると、大股で歩いていき、鈴木和香を椅子に座らせた。

鈴木和香は無意識に立ち上がろうとしたが、来栖季雄に押し戻された。そして彼は彼女の前にしゃがみ込み、彼女の靴を脱がせ、白くて柔らかい足を直接握った。

鈴木和香は来栖季雄が何をしようとしているのか全く理解できず、無意識に足を引っ込めようとしたが、来栖季雄は本能的に彼女の足をさらにしっかりと握り、そして彼の指が彼女の足の裏を押し始めた。

朝、出かける前にシャワーを浴びたばかりで、足の病気もなかったが、靴を履いてこれだけ歩いたのだから、やはり少し不潔だろう。彼がどうして彼女の足をマッサージし始めたのか。それに、今日は買い物に行くことを知っていたので、特に履き心地の良い靴を選んだのだから、全く疲れていなかったのに……

人のいないところでさえ、来栖季雄に足をマッサージされることに慣れていないのに、ましてやここはショッピングモールだ。

しかし来栖季雄が彼女の足首を握る力が強く、鈴木和香は振り払うことができず、最後には手を伸ばして彼の手を掴み、彼の行動を止めるしかなかった。

来栖季雄は顔を上げ、彼女を一瞥してから手を伸ばし、彼女の手を自分の手から取り除き、淡々と言った。「おとなしく座っていなさい。動かないで。」

彼の言葉は穏やかだったが、従わざるを得ない威厳があった。鈴木和香が反応する前に、彼女の手はすでに緩み、そして彼は再び彼女の足を押し始めた。

彼の力加減は均一で、マッサージはとても心地よかった。

鈴木和香は椅子に少し硬直して座り、自分の前にしゃがんでいる来栖季雄を見つめ、口を開いたが、言葉が出てこなかった。

それどころか来栖季雄は、表情が自然で、まるで極めて普通のことをしているかのようだった。

鈴木和香はしばらく見ていたが、思わず視線をそらし、そして近くの柱の後ろに、キャップを被った人が隠れていて、カメラでこの場面を撮影しているのを見つけた。