「ただ一人で悲しみに暮れ、ただ誰にも打ち明けられず苦しみ、ただ今回はより深く傷ついただけ。愛を恐れないのに、こんなにも深く愛してしまう。」
鈴木和香の歌声とともに、彼女と来栖季雄の過去の一幕一幕が、彼女の目の前でスローモーションのように広がっていった。この瞬間、彼女はコンテストのために歌っているのではなく、純粋に彼と彼女が歩んできた愛のために歌っているようだった。
彼女は彼に密かに恋していた日々を思い出した。悲しみを彼に知られないように、喜びは振り向いてからでないと笑えなかった。近づいたと思った瞬間も、最後にはより遠い距離になってしまう。臆病なのに弱くて愛することができなかったのに、それでも骨身に染みるほど愛してしまった。
「ただ一人で夜を過ごし、ただキッチンにあなたと私がいなくなり、ただ寝る前の歌がもうないだけ。私はまだ一人で生きていける...」