第752章 椎名佳樹の決断(11)

しかし、後に椎名グループの動揺を見た時、やはり心に引っかかるものがあった。たとえあの時期に何の接点もなかったとしても。

彼が数日前に彼女のマンションの入り口に現れた時、彼女の理性は彼にはっきりと告げていた。彼と彼女には結果がないこと、彼女はすでに彼に7年の青春を捧げ、人生で最も美しい時間をすべて彼のために費やしたこと、もうこれ以上自分を迷わせ続けることはできないと。しかし、どれほど理性的に考えても、彼が彼女をきつく抱きしめ、涙が彼女の首筋に落ち、あんなにも無力に「雫、少しだけ一緒にいてくれ、ほんの少しだけでいいから」と言った時、彼女のすべての理性は一瞬で崩れ去り、敗北を認めてしまった。

実は彼女は知らなかった。自分と椎名佳樹が今再び近づくことで、最終的な結末が幸せなのか、それともさらなる苦しみなのかを。

しかし、彼女はどうしても彼に冷たい目を向け、見て見ぬふりをすることができなかった。

松本雫はそっとドアを開け、ソファに座って携帯を熱心に見ている椎名佳樹を見た。彼の前のテーブルには、一束の紙が置かれていた。

椎名佳樹は後ろから誰かが近づいてくるのを感じたかのように、急いで手を伸ばしてその紙束を丸め、ポケットに入れた。そして少し頭を回して松本雫を見たが、何も言わなかった。

松本雫は椎名佳樹の隣に座り、彼の携帯画面をちらりと見た。鈴木和香のウェイボーの返信欄で、すべてが目を覆いたくなるような罵詈雑言だった。

「もうそんなもの見ないで。ネット上のことなんて、真に受けるものじゃないわ」

椎名佳樹は何も言わず、ただ軽く頷いて携帯を脇のテーブルに投げ、ソファに身を預けた。

彼は外のコートを脱ぎ、中は単純な青いシャツだけだった。部屋の暖房が少し強かったため、袖口は高く捲り上げられ、松本雫はすぐに彼の腕に大きな痣があるのを見つけた。彼女はすぐに眉をひそめ、彼の腕をつかんだ。「これは何?どうしてこんなにひどい怪我を?病院に行った?」

松本雫がこうしてつかんだので、椎名佳樹は痛みで息を飲んだ。松本雫はすぐに手を離し、椎名佳樹は少し震える声で説明した。「大丈夫だよ、カメラに当たっただけだ。病院に行く必要はない」