第778章 椎名佳樹の選択(37)

「遊びに行きたいわけじゃないの」鈴木和香は来栖季雄が自分の意図を誤解したことを知り、頭を振った。「移民したいの」

「どうして急にそんな考えに?」来栖季雄は眉間にしわを寄せ、何かを理解したかのように続けた。「ネット上のあの件のせい?」

来栖季雄は立て続けに二つの質問をした後、少し目を伏せた。「和香、ごめん、結局ちゃんと守ってあげられなかった」

できることなら、彼女が幼い頃から育ち、多くの思い出や家族、友人がいるこの街で、一緒に白髪になるまで過ごしたかった。

しかし、彼女の心の奥底ではやはり気にしていて、この国を離れたいと思うほどに気にしていたとは。

鈴木和香は来栖季雄の最後の言葉に心を動かされ、彼の腰をぎゅっと抱きしめ、小さな声で言った。「実は、私があの噂を気にしているわけじゃないの。将来子供ができたとき、赤ちゃんがそんな噂の中で生まれてくるのが嫌なの」

「季雄、わかるでしょう...あの人々の指摘は子供に大きな影を落とすわ。国を変えれば、知り合いが少なくても構わないじゃない。友達はまた作れるし、何より大切なのは、私たちが一緒にいることでしょう?」

そう、何より大切なのは二人が一緒にいること。どんな街でも、どんな国でも、地球上のどんな場所でも、来栖季雄と鈴木和香が一緒にいることが最も完璧な結末だ。

あの言葉はどう言ったっけ?

心安らぐところが我が故郷。

鈴木和香がいる場所が、来栖季雄の家だ。

そして来栖季雄がいる場所に、鈴木和香は必ずついていく。

来栖季雄はそう考えて、軽く頷いた。「いいよ、移民しよう。君の言う通りにしよう」

鈴木和香はくすくす笑った。二十数年間生まれ育ったこの街を離れるのは確かに心の底では悲しいけれど、子供のためなら何でも価値がある。結局、この世の中に完璧なものなどなく、必ず何かしら後悔は残るものだ。でも、二人が一緒にいられるだけでも幸せだった。

来栖季雄に心の中の後悔を見透かされないように、鈴木和香は目を細めて、移民後の生活について多くを語った。まるでおとぎ話から抜け出してきたような、とても美しく憧れる光景だった。

「素敵な家を買って、庭にブランコを作るの。夏が来たら、夕方に庭でコーヒーを飲んで...」