「今となっては松本雫が何を企んでいるのか、さっぱりわからないわ。サプライズだって言ってたじゃない?」
「そうよね、松本雫がステージに上がって歌を歌ってくれるのかと思ったのに」
……
客席の騒めきに対して、椎名佳樹は落ち着き払った様子で、眉一つ動かさず、前方をまっすぐ見つめながらマイクを持ち、淡々と話し続けた。「松本雫さんが私のために10分の時間を確保してくれたこと、そしてその時間を番組側が許可してくれたことに感謝します。私がこのステージに立っているのは、皆さんに何かを披露するためではなく、説明するためです」
椎名佳樹の最後の「説明する」という言葉に、会場の雰囲気が再び静まり返った。
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楽屋に立っていた鈴木和香は、壁のスクリーンに映る椎名佳樹を見つめ、目に驚きの色が浮かんだ。