第828章 両親に会う(8)

「できるだけ早く……来週の水曜日?だめ、その日は友達の結婚式で、出席しないと……わかった、来週の金曜日にしましょう……さようなら。」

松本雫は電話を切った瞬間、ついに涙を抑えきれず、糸の切れた真珠のように、一粒また一粒と落ちていった。

七年間、最初は世間知らずだったが、今では成熟し洗練された彼女は、人生で最も美しい時間をすべて彼に捧げてきた。

しかし、それでも良い結末を手に入れることはできなかった。

人は一生のうち、愚かであってもいいし、卑しくてもいい。だが、何度も愚かで卑しくあり続けることはできない。

貧しい山村の出身である彼女は、かつて父親を救うために身を売るという大義名分があったとしても、結局は身を売る女に過ぎない。だから、名門の家柄で有能な椎名家の若旦那に相応しいはずがないのだ。

だから、彼女がこのような結末を迎えたのは、自業自得であり、分不相応な夢を見た結果であり、愚かな妄想の結果なのだ。

松本雫の顔色が青ざめ、全身が激しく震えた。そして突然、傍らにあった妊娠検査の結果を手に取り、ビリビリと細かく引き裂いた。さらにバッグの中の葉酸も取り出し、車のドアを開けて降り、ゴミ箱の前まで歩いていき、それらを一瞬の躊躇もなくゴミ箱に投げ入れた。そして車に戻り、シートベルトを締め、アクセルを踏んで去っていった。

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鈴木夏美は今夜、クライアントと帝国グランドホテルで食事の約束があったが、思いがけず一ヶ月も連絡を取っていなかった田中大翔に出くわした。

そのクライアントは少し厄介で、彼女に絶え間なくお酒を勧めてきた。夏美は酒量には自信があったが、席に着いた瞬間から飲み続けるのは耐えられなかった。

途中で夏美は本当に耐えられなくなり、自分の秘書にそのクライアントの相手をさせ、何か言い訳をして個室から出てきた。

夏美がドアを閉めた時、向かいの個室のドアがちょうど開いた。彼女は無意識に顔を上げて見ると、田中大翔がロイヤルブルーのシャツを着て、きちんとした身なりで笑顔を浮かべながら部屋の中に向かって「すぐ戻る」と言い、ドアを閉めるところだった。

田中大翔が振り返ると、廊下の向かい側に立つ夏美の姿が目に入った。彼の表情は一瞬硬くなり、その場に立ち尽くしたまま、夏美をじっと見つめた。