第847章 エピローグ(7)

椎名佳樹と松本雫は、この七年余りの間、何度も肌を重ねてきたが、お互いに甘い言葉を口にしたことは一度もなかった。

今、雫の「私はずっとあなたのそばにいるわ」という一言が、佳樹の心の奥深くまで突き刺さり、彼は全身が五分間も硬直したまま動けなくなった。その後、突然起き上がると、雫を一気に抱き寄せ、強く抱きしめた。

雫は佳樹のこの突然の抱擁に戸惑い、数秒間呆然としていたが、やがて手を上げて佳樹を抱き返した。

彼女の記憶の中で、これは彼が初めてこのように彼女を抱きしめたことだった。

部屋は静かで、二人はこうして長い間、静かに抱き合っていた。佳樹の波立っていた心が最後には平静を取り戻すほど長く。彼は目を閉じ、鼻息の間に雫の体から漂う淡い香りを感じていた。この瞬間、佳樹は突然、午前中に「和光」で感じたあの衝動がよみがえってきた。雫に指輪を買ってあげたい、彼女と結婚したい、彼女とこのまま一生を過ごしたい...平凡で、シンプルな生活を...もはやビジネスの拡大や、ビジネス界の強者になることを考えず...

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救急車は時間通りに到着し、鈴木夏美は多くの血を失ったものの、過度ではなく、救助も迅速だったため、一命を取り留めた。

ただ、来栖季雄が椎名佳樹に送ったメールにあったように、ナイフはちょうど夏美の子宮を刺し、大きな穴を開けてしまった。縫合はしたものの、妊娠の可能性はほぼゼロに近かった。

この知らせを聞いて、最も悲しんだのは田中大翔でも鈴木旦那夫妻でもなく、鈴木和香だった。すでに胎動を感じていた彼女は、病院のベッドに横たわり、目がクルミのように腫れるほど泣き、心の中で罪悪感に苛まれていた。

季雄は和香がこれほど悲しんでいるのを見て、当然心を痛め、特別にルーシーに連絡を取り、海外の最高の産婦人科医を探して、何か良い解決策がないか考えてもらった。

最終的に海外の医師は和香とビデオ通話をし、彼らは全力で方法を考えると言い、さらに和香に、彼らの国でも同様のケースがあったが、最終的には母親になれたと伝えた。この世界には奇跡は常に存在するものだと信じるべきだと。

和香はこれらの言葉を聞いて、ようやく感情が安定し、しっかりと眠ることができた。