第848章 エピローグ(8)

二人はとても息が合っていて、不愉快なことには触れず、以前と同じように笑い合い、まるで仲の良い姉妹のように見えた。看護師が一度見かけたときには、鈴木夫人にこっそりと、この二人の娘さんは本当に素晴らしいと褒めたほどだった。

実際、多くの場合、正しいか間違っているか、是か非かを判断することはできない。

この世界には、絶対的な優しさも、絶対的な悪意もない。多くの場合、私が許そうとするのは、私がその人を大切に思っているからだ。

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時間はあっという間に過ぎ、鈴木和香と来栖季雄の結婚式の日を迎えた。

本来なら和香は結婚式の日程を延期して、夏美が退院してから行いたいと思っていた。しかし、今の彼女はすでに妊娠2ヶ月を過ぎ、お腹が明らかに膨らみ始めていた。これ以上延期すれば、お腹はさらに大きくなり、ウェディングドレスや礼服が着られなくなるだけでなく、結婚式を行うのは子供が生まれて産後の養生が終わってからになってしまう。それに招待状もすでに送ってしまっていて、日程を変更するとなると一人一人に連絡しなければならない。

そのため、いろいろと相談した結果、予定通りの日程で行うことになった。

夏美はベッドから起き上がって歩くことができないので、ブライズメイドを務めることはできなかったが、それでも結婚式には参加したいと思っていた。最終的に田中大翔が良い方法を思いついた。医者に付き添ってもらい、夏美を直接結婚式会場に連れて行くことにしたのだ。万が一の事態が起きても、すぐに対応できるようにした。

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派出所には当直の人しかいなかった。椎名佳樹は一人一人にタバコを一箱ずつ渡し、その中の一人が彼を取調室へ案内した。

部屋の中では一つの明かりだけがついていて、光は薄暗く、言い表せないようなカビ臭さがあった。

鉄格子の向こうに座っている赤嶺絹代は、鈍い音を聞いて、少し頭を上げた。たった数日会っていないだけなのに、彼女は随分と老けて見え、黒髪の多くが白髪に変わっていた。

絹代は佳樹をちらりと見ただけで、顔をそむけた。その目は敵を見るかのように冷たかった。

佳樹は一瞬まぶたを伏せ、自分の後ろについてきた人に言った。「少しの間、彼女と二人きりでいてもいいですか?」

その人はうなずき、ドアを閉めて出て行った。