第849章 エピローグ（9）

赤嶺絹代の唇が動いた。椎名佳樹に何か言おうとしたようだが、結局何も言わなかった。

佳樹の目に失望の色が浮かんだ。彼は頭を地面に強く打ち付けた。「すみません、お母さん」

この言葉は、ただ純粋に息子としての立場から言ったものだった。

絹代にとって、彼はやはり不孝な息子なのだ。

取調室は静まり返っていた。佳樹は冷たいタイルに額を押し付けたまましばらく動かず、ようやくゆっくりと立ち上がった。彼は絹代を深く見つめ、「お体を大事に」と一言残した。そして長い間待ったが、絹代が口を開くことはなく、最後には少し寂しげに背を向けて部屋を出た。

絹代は佳樹の背中を見つめ、複雑な表情を浮かべた。

佳樹がドアを開けた瞬間、絹代はついに我慢できずに声をかけた。「佳樹、体に気をつけなさい」

たった一言の簡単な言葉だったが、佳樹の目は突然赤くなった。彼は振り返り、絹代を見つめながら少し微笑んだ。「お母さん、出所するのを待ってます」

この言葉を言ったとき、佳樹は本当に二十年後、絹代が刑務所から出てくることを心から願っていた。その時には彼女の髪も白くなっているだろうが、彼は彼女の人生の最後まで面倒を見るつもりだった。

しかし彼は最終的に、絹代が彼に出所を待つ機会さえ与えないことになるとは思いもしなかった。

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結婚式の会場を飾り付けるとき、みんなアイデアを出し合い、準備に参加した。しかし実際に結婚式が行われる日になって、彼らは会場の装飾が当初の想像をはるかに超える夢のような美しさだということに気づいた。まるでおとぎ話の一場面のようだった。

きらめくシャンデリア、絶え間なく舞い落ちる特殊効果の花びら、ガラス張りの床、華やかなゲスト、人の背丈ほどもある九段のケーキ...そして大スクリーンには鈴木和香と来栖季雄のウェディング写真とウェディングマーチが流れ続けていた。

12時、ゲストが全員揃った。

12時15分、アシスタントが登場してスピーチを始め、会場は静まり返った。

12時20分、アシスタントが新郎と付添人の登場を促すと、大きな拍手が沸き起こった。