第862章 エピローグ（22）

少し離れたテレビでは、広告が終わり、「パパはどこに行った？」という名のバラエティ番組が始まっていた。

番組の中に、とても可愛らしい男の子がいて、予想外な発言をするたびに、松本雫は特に気に入った様子で、時々椎名佳樹に向かって「かわいすぎる」とつぶやいていた。

最後の方で、雫はうっかり口走ってしまった。「私が産む赤ちゃんも、こんなに可愛かったらいいのに！」

いつも避妊対策をしている佳樹は、雫のこの言葉に深い意味を見出さず、口の中の食事を噛みながら、考えもせずに言った。「将来、俺たちの子供は、きっとあの子より可愛くて、もっと綺麗だよ」

俺たちの子供……この五文字が、雫の心を激しく震わせ、体内に大波が押し寄せるような感覚を覚えた。

彼はただ何気なく言っただけなのか、それとも本当に彼女との間に子供が欲しいと思っているのか？

雫の頭の中はしばらく混乱していたが、ようやく顔を上げ、食事に集中している佳樹を見つめて名前を呼んだ。「佳樹……」

「ん？」佳樹は顔を上げ、雫の視線に応えた。「どうした？」

雫はまぶたを一瞬伏せ、明るく笑って何か言おうとした瞬間、テーブルに置かれていた佳樹のスマホが突然鳴り始めた。

雫は口元まで出かかった言葉を飲み込み、振動している佳樹のスマホに顎をしゃくった。

何気なく一瞥しただけだったが、雫は佳樹のスマホ画面に表示された着信名をはっきりと見た：林千恵子。

佳樹は着信表示をちらりと見たが、慌てることなくスマホを手に取った。しかし、すぐには出ず、代わりに雫を見つめてもう一度尋ねた。「何か言いたいことがあったの？」

雫は首を振り、先に電話に出るよう促した。

佳樹はようやくスマホの画面をスワイプし、耳に当てた。「千恵子さん、何のご用件でしょうか？」

「佳樹兄、お父さんが明日の昼に東京に着くの。私の婚約者として、明日は食事に来るのを忘れないでね……」

去年の年末に口頭で婚約を交わして以来、千恵子は毎日のように彼のことを婚約者と呼んでいた。佳樹はそれを何度も聞かされていたが、今、雫の前でその言葉を聞いた時、彼は非常に動揺した。無意識のうちに手を上げ、スマホの受話口を押さえ、雫にバルコニーを指差して、そこで電話に出ることを暗示した。雫がうなずくのを確認してから、彼は立ち去った。