鈴木知得留は目的地に到着した。
ブラックファイブクラブは会員制で、上流階級の若者たちが集まる場所だった。彼女は冬木空がこんな場所を好むとは思っていなかった。
スタッフの案内で、彼女は豪華なスイートルームに入った。部屋は少し暗く、大きなビリヤード台があり、冬木空が身を屈めてプレイしていた。優雅な姿勢で、落ち着き払っていて、彼女の到着に目もくれず、相変わらず自然にキューを振っていた。
傍らでキューを持ちワイングラスを手にしていた別の男が、からかうような声で言った。「空、君の婚約者が来たよ」
冬木空は長い指でキューを少し強く握り、冷ややかに言った。「誰の婚約者かわからないがな」
その言葉と共に、一打ちで二つの球が入り、ゲームは終了した。
冬木空は体を起こし、キューを脇に置き、優雅にワイングラスを持って一口飲み、鈴木知得留を見て言った。「招待状を持ってきたのか?」