第17章 私は自分の潔白に責任を持たなければならない

ブラックファイブクラブの個室。

鈴木知得留が話し終えると、冬木空と北村忠は黙って彼女を見つめていた。その視線に知得留は少し居心地が悪くなり、普段の調子を取り戻そうと努めた。「私の話は以上です」

冬木空の口角が少し上がったように見え、「ああ」と返事をした。

「何か考えや意見はありませんか?」と知得留は尋ねた。

「ない」

「じゃあ、今のあなたの態度はどういう意味なんですか?」知得留は冬木空が全く理解できなかった。

「お前の芝居を見守るだけだ」と冬木空は答えた。

知得留は時々、冬木空との会話で本当に頭にくることがあった。

「じゃあ、私は先に失礼します」

どうせ、二人には話すことなどない。

「待て」と冬木空が突然彼女を呼び止めた。

その瞬間、知得留は少し嬉しくなった。

「車を持ってきていない。送ってくれ」と冬木空は率直に言った。

知得留は目を白黒させた。

彼女は頷いて、先に歩き出した。

冬木空は後ろについて歩いた。

知得留が個室のドアを開けると、ちょうどドアの前で従業員が飲み物を運んでこようとしていて、知得留は危うくぶつかりそうになった。その瞬間、本能的に大きく後ろに下がったが、体勢を崩しかけた。後ろの人が支えてくれると思ったが、後ろの人は彼女よりもさらに遠くに下がっていた。

彼女は眉をひそめて冬木空を見た。「支えてくれてもよかったでしょう?」

冬木空は真面目な顔で言った。「私の潔白を守らなければならない」

「……」何が潔白よ。

上から下まで、左から右まで、彼女の何を見てないというの?!

冬木空は知得留の視線に少し動揺し、冷たい声で言った。「まだ行かないのか?」

知得留は言葉もなく出て行った。

北村忠は二人の前後する姿を見て、意味深な笑みを浮かべた。

知得留の車の中で、知得留は尋ねた。「どちらまで?」

「家だ」

そして、二人とも何も話さなくなった。

窒息しそうなほど静かな空間で、知得留は深く息を吸って言った。「田村厚に女性を送る時は、手伝ってもらいたいんです。私が思いつく最適な場所はフォーシーズンインターナショナルホテル、つまりあなたの家の事業です」

「ああ」冬木空は頷き、知得留が何を求めているのか説明する必要もないようだった。

知得留もそれ以上は何も言わず、冬木空を送り届けた後、鈴木邸に戻った。