第14章 反撃(1)

ホールの中で、根岸史子は優しい声で一言一句丁寧に言った。「私は思うのですが、こうなった以上、穏便に婚約を解消するのがよいのではないでしょうか。結婚は本来二人の問題ですし、今は新しい時代です。若い人が自由に恋愛するのはごく普通のことです。知得留が成長過程で他の人を好きになったことを素直に認め、冬木家に説明して婚約を解消しましょう」

「そんなことはできません!」秋山玲奈は言った。「鈴木家の評判はどうなるのですか?」

「今でも評判は落ちています。どう説明しようと、ニュースを抑えようと、みんな知得留と田村厚が付き合っていたと思い込んでいます。このまま冬木家と対立を続けて関係を悪化させるよりも、知得留と田村厚を認めてあげた方がいい。私たちが冬木家に謝罪に行けば、冬木家もどんなに怒っていても私たちの謝罪を受け入れないわけにはいかないでしょう。どのみち、冬木家も鈴木家の面子は立ててくれるはずです」と根岸史子は言い、この問題を真剣に考えているように見えた。

秋山玲奈は黙って、根岸史子の言葉を考えていた。

鈴木山も黙っていた。

これが最善の方法であることは間違いなかった。冬木家と協力して婚約を解消し、メディアの前で「前の世代の軽い約束事だった。今は子供たちも大人になって自分の感情を持っているのだから、親としては祝福したい」と言えば、両家に対する否定的なニュースを平和的に解決できる。

そして根岸史子の言う通り、冬木家がどれほど不本意でも、こちらから言い出したら断れないはず。冬木家は損をしても、この件では協力せざるを得ない。

「冬木家から婚約破棄を持ちかけられて鈴木家と知得留が傷つくよりも、私たちから和解を申し出た方がいい。最悪の場合でも、知得留が本当に田村厚を好きなのなら、それを認めてあげればいい。上条お姉さまが亡くなる時、知得留と知得留を大切にすると約束しました。知得留に少しでも辛い思いをさせたくないのです」根岸史子は感動的に語った。

リビングは静まり返っていた。

全員がこの可能性について考えているようだった。

鈴木知得留だけが、本当に冷淡だった。

以前なら、彼女は根岸史子が自分のことを考えてくれることに感謝していただろう。

彼女が口を開こうとした時、秋山玲奈が言った。「鈴木山、あなたはどうすべきだと思う?」