翌日の朝。
鈴木知得留が目を覚ますと、頭が激しく痛んでいた。
何が起きたのか、頭全体が自分のものではないような感覚だった。
ベッドから起き上がり、見知らぬ周囲を見回した。
うわっ、ここはどこ?!
完全に記憶が途切れていた。
昨夜、確か冬木空と一緒にいて、港で田村厚と根岸佐伯がスクリーンに映っているのを見ていて、その後彼に宿泊先を探してもらったはずで、ここがそこなんだろう…
もう一度周りを見渡し、自分の服装も確認した。
ちくしょう。
服はどこ?服は?服は?!
ドアが突然開き、鈴木知得留は反射的にバスローブをきつく巻き付けた。すぐに口角を上げ、「あなたですか?」
冬木空は無表情で彼女を見つめ、「起きたなら出てこい!」
そして急にドアを閉めた。
鈴木知得留は本当に冬木空の性格が嫌いだった。彼に2000万円借りているわけでもないのに、なんであんなに不機嫌なの。
彼女はベッドから起き上がり、部屋の浴室に入って、少し青白く疲れた顔を鏡で確認した。
やはりアルコールは良くないものだ。昨夜飲みすぎた。以前の彼女は一度も酔ったことがなかったのに。
冷水で顔を洗い、もう一度自分の姿を確認すると、首に深い歯形があることに気付いた。手で触ってみると、今は赤みを帯びた青あざになっていて、明らかに自分で付けたものではない…
表面上は紳士面してても、裏では獣のような人もいるものね。
鈴木知得留は身支度を整えて、リビングへ向かった。
冬木空は床から天井までの窓の前のダイニングテーブルで朝食を優雅に取っていた。
「冬木空、これは何?」鈴木知得留は歯形を指差しながら、口角を上げた。
冬木空は冷ややかに笑っただけで答えなかった。
その表情は完全な嘲笑だった。
「冬木空」鈴木知得留は再び呼びかけた。
「鈴木さんは生まれ変わりができるだけでなく、都合の良い記憶喪失もできるんですか?」冬木空は冷ややかに言った。
鈴木知得留は眉をひそめた。
冬木空は食器を置き、「鈴木さんが覚えていないなら、それでいいでしょう」
彼は口を拭い、食事を終えたようで、立ち上がって去ろうとした。
「冬木空、やりたい放題して逃げるつもり?」鈴木知得留は彼の腕を掴んで、行かせまいとした。