第23章 策が裏目に出る

鈴木知得留はタクシーに乗ってゆっくりと鈴木邸に戻ってきた。

邸内の雰囲気は少し緊張していた。

一晩帰らなかったのだから、当然良い顔をされるはずもない。

しかし彼女は何事もなかったかのように、軽やかに居間に入った。ソファに座っている秋山玲奈、そして週末で父の鈴木山もいて、根岸史子もいた。意外なことに根岸佐伯もその中にいた。

彼女は根岸佐伯の表情を見た。案の定、良くなかった。

目覚めた後の崩壊感は想像に難くない。前世で同じような経験をした時よりも、もっと酷いはずだ。

「昨夜はどこにいたの?電話にも出ないし!」秋山玲奈は厳しい口調で言った。「こんな大変なことが起きているのに、まだ反省もないの?」

「おばあちゃん、携帯の電池が切れちゃったの」鈴木知得留は甘えた声で言い、秋山玲奈の隣に親しげに座った。「昨夜は佐伯と一緒に飲んで酔っちゃって、気がついたら冬木空に連れて行かれて、そのまま彼の所で一晩過ごしたの」

「若い娘が結婚前に一緒に住むなんて、どういうことよ」秋山玲奈は叱ったが、冬木空の名前を聞いた後、明らかに声のトーンが和らいだ。

「何もしてないわ、おばあちゃん。変な考えしないで。自分の体は大切にしてるから」鈴木知得留はおだてながら、わざと根岸佐伯に向かって言った。「でも佐伯、昨夜一緒だったのに、どうして別々になっちゃったの?あなたどこに行ったの?」

根岸佐伯の顔が一瞬で真っ青になり、その時の表情は明らかに良くなかった。

傍らの根岸史子は急いで口を開いた。「昨夜は姉妹二人とも本当に困ったわね。二人とも酔っ払って。佐伯も酔っ払って、目が覚めたらあなたがいなくなってたから、先に帰ってきたのよ」

「そう」鈴木知得留は頷き、意味深な笑みを浮かべた。

根岸史子も何か後ろめたさがあるようで、この件についてこれ以上深く追及しなかった。

「昨夜は冬木空と一緒だったって?」秋山玲奈が尋ねた。

「ええ」鈴木知得留は頷いた。

「あなたたち...」秋山玲奈は言葉を濁し、鈴木知得留の答えを待った。

「私たち上手くいってるわ。冬木空は私の問題を処理する時間をくれるって」鈴木知得留は笑った。「どうあれ、私たち鈴木家という大きな看板を、冬木家だって手放したくないでしょう」