第64章 鈴木知得留の意図的な離間

一時、静かな客間。

根岸史子は即座に答えなかった。鈴木知得留は焦らず、もう一度はっきりと尋ねた。「おばさん、佐伯はどこ?」

「佐伯は部屋で休んでいるわ。最近、精神的なダメージが大きくて療養中なの。あなたが...」

「会いに行きます」鈴木知得留は根岸史子の言葉を最後まで聞かずに、裏庭へ向かって歩き出した。

根岸史子は鈴木知得留の後ろ姿を見つめながら、内心不安になった。

実は根岸佐伯のことをまだ心配していた。長年育ててきて多くのことを教えてきたとはいえ、まだまだ未熟で、間違ったことを言ったり動揺したりするのではないかと心配だった。

そう考えながら、根岸史子は立ち上がって様子を見に行こうとした。

秋山玲奈が彼女を呼び止めた。「ついて行かないで。知得留も佐伯に謝るべきよ。あなたがいたら姉妹の話の邪魔になるわ」