一時、静かな客間。
根岸史子は即座に答えなかった。鈴木知得留は焦らず、もう一度はっきりと尋ねた。「おばさん、佐伯はどこ?」
「佐伯は部屋で休んでいるわ。最近、精神的なダメージが大きくて療養中なの。あなたが...」
「会いに行きます」鈴木知得留は根岸史子の言葉を最後まで聞かずに、裏庭へ向かって歩き出した。
根岸史子は鈴木知得留の後ろ姿を見つめながら、内心不安になった。
実は根岸佐伯のことをまだ心配していた。長年育ててきて多くのことを教えてきたとはいえ、まだまだ未熟で、間違ったことを言ったり動揺したりするのではないかと心配だった。
そう考えながら、根岸史子は立ち上がって様子を見に行こうとした。
秋山玲奈が彼女を呼び止めた。「ついて行かないで。知得留も佐伯に謝るべきよ。あなたがいたら姉妹の話の邪魔になるわ」
根岸史子は秋山玲奈がそう言うのを聞いて、しぶしぶ笑顔で頷くしかなかった。
道明寺華は礼儀正しく客間で鈴木知得留を待っていた。
その時、鈴木知得留は既に根岸佐伯の部屋の前に到着し、ドアをノックした。
根岸佐伯は鈴木知得留だとは知らず、パジャマ姿で携帯を見ながら何かを楽しそうに笑っていたが、ドアを開けて鈴木知得留を見た途端に表情が変わった。彼女は緊張した様子で「お姉さん、どうして戻ってきたの?」と尋ねた。
鈴木知得留は口角を上げて「おばさんが呼んだの。送別会だって」
「ああ」根岸佐伯は頷いた。
「こんなことがあった以上、私たち姉妹でちゃんと話し合うべきね」鈴木知得留は根岸佐伯の同意を待たずに部屋に入った。
根岸佐伯は不安でたまらなかった。
今、鈴木知得留が何を企んでいるのか全く分からない。しかも、この事件は冤罪だったので、彼女にはどうしても自信が持てなかった。
母親の姿が見当たらないことを確認した後、しぶしぶ鈴木知得留について部屋に戻った。
鈴木知得留は率先して言った。「佐伯、今日は事故のことについては話さないわ。私たちはそれぞれの言い分があるから、裁判所の判決を待つしかないでしょう」
根岸佐伯は驚いた。
鈴木知得留が自分を問い詰めに来たと思っていたのだ。
彼女は困惑して鈴木知得留を見つめ、何をしようとしているのか全く理解できなかった。