あっという間。
控訴審の日が来た。
鈴木友道がまた休暇を取って戻ってきた。
朝早くから車を運転して姉を裁判所へ送る。
車内で、鈴木知得留と藤田文は法廷での手続きについて話し合っていた。
藤田文は早朝から鈴木知得留の別邸で待機していた。
「加藤健は法曹界での威信が高いですね」突然、鈴木知得留が話題を変えた。
明らかに減刑の話をしていたのに、なぜ鈴木知得留の様子が冴えないのか、藤田文には分からなかった。
「はい」藤田文は頷いた。
「この間、あなたも何か脅迫されたでしょう」加藤健が気にしなくても、彼に取り入ろうとする多くの弁護士が意図的に脅かしているはずだ。
「大したことではありません。どんな場合でも、弁護士は依頼人に責任を持たなければなりません」
だから藤田文は本当に原則を守る弁護士だ。前世で頭角を現したのも納得できる。