待合室の中。
鈴木知得留は黙って椅子に座っていた。
頭の中には冬木空が去る時の、なぜか温かみを感じさせる後ろ姿が浮かんでいた。
冬木空は本当に彼女のために多くのことをしてくれた。彼女も彼のすべてに感謝し、心も動かされていた。しかし、これらすべては心が動いているからこそのことで、彼女が深く感じ取れるのは、彼に対する感情が少しずつ、むしろ速いスピードで深まっていることだった。
彼女は深く考え込んでいた。
胸が波打っていた。
しばらくして、職員が法廷に呼びに来た。
彼女は椅子から立ち上がり、深く息を吸い、口角に笑みを浮かべた。
恋愛のことは一旦置いておいて、クズを懲らしめることは一刻も遅らせられない!
彼女は法廷に入った。
藤田文はすでに弁護士席で彼女を待っていた。
彼女は軽く頷き、傍聴席に目を向けた。
一目で冬木空を見つけることができた。
目立たない位置に座っていたが、それでも際立って見えた。
彼女は彼に向かって大きく笑った。
冬木空は口角を少し上げ、それが返事のようだった。
鈴木知得留は口を尖らせた。
この冬木空という闇男子を落とすのは、本当に簡単なことではない。
二人のやり取りは、原告席の根岸佐伯にはっきりと見えていた。彼女は歯を食いしばり、目には露骨な嫉妬の色が浮かび、心の中では耐えられないほどの苦しみを感じていた。なぜ鈴木知得留がこんな状態になっても冬木空は彼女に情を持つのか!
なぜ鈴木知得留が冬木空と付き合うと言っただけで、こんなにも簡単に冬木空を誘惑できるのか。
自分は何年もの間、意図的にも無意識にも冬木空の前で好意を示してきたのに、彼は一度も真剣に自分を見てくれなかった。
以前は気にしていなかった。どうせ彼女も冬木空のことは好きではなかったし、彼が普通の男性ではないと思って心に留めていなかった。ただ冬木家の奥様の座が欲しかっただけなのに!
今、彼と鈴木知得留の間で交わされる視線を見て、さらに彼の身体状態についての噂を否定されて、言い表せない感情が広がっていく。彼女は幼い頃から鈴木知得留が何もかも自分より優れていることに我慢できなかった。運も、学業も、容姿も、男性を誘惑する能力まで彼女より上手い!