その日の午後。
鈴木知得留は鈴木山からの電話を受けた。
判決が出たら控訴審を申請できるとのことで、内部手続きの関係で控訴審の日程がすでに決まっていた。来月10日、つまりあと15日後だ。
知らせを受けると、彼女は冬木空に電話をかけ、すぐにこの情報を共有したかった。
これは...乙女の恋心?!
鈴木知得留は冬木空のだらしない、でも魅力的な声を聞くのが楽しみだった。
しかし、相手の応答は良くなかった。「何の用だ?」
鈴木知得留は傷ついた。
彼女の熱意は一気に冷水を浴びせられたようだった。
鈴木知得留の沈黙に、向こうは眉をひそめ、冬木空は「何かあったのか?」と尋ねた。
今度は明らかに口調が柔らかくなっていた。
「控訴審の日程が決まったから、先に教えたくて。来月10日よ」鈴木知得留は元気なく言った。
「ああ」冬木空は短く返事をした。
鈴木知得留が電話を切ろうとした瞬間、冬木空が突然口を開いた。「寝てたんだ」
さっきの不機嫌な態度の説明のようだった。
鈴木知得留は彼の説明を聞いてさらに不機嫌になった。「忙しいって言ってたじゃない?寝るのに忙しかったの?」
彼女と食事するよりも寝ることを選んだの?!
「目の充血と隈が何故できたのか、鈴木さんにはお分かりにならないのですか?」冬木空は尋ねた。
鈴木知得留はハッとした。
彼の言葉の意味は、昨夜彼女の件で全く休めなかったということ?
だから今日は睡眠を取り戻そうとしていたのだ。
そして冬木空の性格からして、徹夜でもしなければ、こんなに疲れているはずがない。
そうか。
彼女は再び感動してしまった。
携帯をしっかりと握りしめ、「ゆっくり休んで」と言った。
「ああ」
電話を切る。
鈴木知得留は電話を見つめながらぼんやりしていた。
明らかに幸せに満ちあふれている様子だった。
鈴木友道は彼女の様子を見て、「姉さん、よだれが出そうだよ」と言った。
鈴木知得留は弟を睨みつけた。
「控訴審で減刑されても、冬木家があなたを受け入れないかもしれないって心配しないの?」鈴木友道は尋ねた。
先ほど事件について話し合う時、鈴木知得留は意図的に鈴木友道と道明寺華を避けた。彼らを信用していないわけではなく、余計な問題を避けたかっただけだ。
知る人が少なければ少ないほど、トラブルも少なくなる。