第82章 根岸佐伯の末路(3)悲惨で絶望的!

田村厚との電話を切った後、根岸史子は少し横になったものの、心配で結局ベッドから起き上がった。

この時、リビングには秋山玲奈しかいなかった。

鈴木知得留は帰宅後、道明寺華と一緒に直接部屋に戻り、鈴木友道も自室に戻っていた。

秋山玲奈は根岸史子が起き上がるのを見て、不機嫌そうに言った。「死にそうなくせに、また何しに起きてきたの?」

「お母さん...」根岸史子は目を赤くして言った。「今回は全て私が悪かったんです。」

「もういいわ。鈴木山も気にしてないし、私みたいな年寄りが何か言うわけでもないわ。そんな泣き喚いて、まるで私があなたを虐めてるみたいじゃないの。」

根岸史子は涙を拭いながら、弱々しく言った。「お母さん、私、拘置所に根岸佐伯を見に行きます。」

「何しに会いに行くの?あんな下賤な奴に。」秋山玲奈は彼女の話題が出ただけで歯ぎしりした。

「なぜそんな悪辣なことをしたのか、聞いてみたいんです。知得留にも説明したいんです。」

「好きにしなさい!」

根岸史子はさらに哀れっぽい言葉を並べてから、鈴木邸を後にした。

車に乗るなり、根岸史子は冷たい表情を取り戻した。

実際には根岸佐伯に会う必要はなかったが、鈴木知得留が根岸佐伯に何を話したのか気になっていた。

彼女は鈴木知得留という女性に対して少しも油断できず、むしろ鈴木山が知得留は許してくれたと言ったことさえ、何か裏があるのではないかと疑っていた。おそらく父親からより大きな信頼を得るためだろう。

認めざるを得ないが、鈴木山はこの数年で本当に彼女を好きになっていた。知得留が今この時期に強く父親に離縁を迫れば、父親との間に溝ができ、鈴木山は自分に申し訳なく思い、父娘の関係にも影響が出るかもしれない。

もし本当に彼女の推測通りなら、知得留という女は本当に手強い。今や一歩引いて人心を掌握することを学んでいる。そしてこれほど落ち着いて慌てず騒がず行動できることは、知得留の21歳という年齢を考えると本当に恐ろしい。

そんなことを考えているうちに、車は目的地に到着した。

根岸史子は正規の手続きを経て、根岸佐伯と面会した。