突然静まり返った法廷。
全員の視線が根岸佐伯に向けられた。
誰もが、いつも良い子を演じていた根岸佐伯が、仮面を剥がした後でこれほど邪悪になるとは想像もしていなかっただろう。
この面目丸つぶれは本当に痛かった。
根岸佐伯は街中の注目を浴び、被害者という立場が一瞬にして悪意に満ちた加害者へと変わった。今まで同情的な目で見られていたのに、今や突然、その毒蛇のような冷酷な心を嫌悪する目に変わった。
「違います、違います……全部彼女の嘘です。私を陥れようとしているんです!」根岸佐伯は涙を流しながら訴え、抑えきれない涙を流しながら、興奮して鈴木知得留を見つめた。「姉さん、姉さん信じて、田中さんが離間を図ってるんです。自分の罪を逃れようとして私を陥れているんです。姉さん、私を信じて、私たちはずっと仲が良かったじゃないですか……」
鈴木知得留は何も言わず、表情は冷たかった。
根岸佐伯は鈴木知得留が反応しないのを見て、急に田中さんの方を向き、激しく言い放った。「証拠はあるの?全部あなたの言い分でしょう、作り話じゃないの。私があなたに指示したという証拠があるの?何か証拠があるの?ただの作り話よ!」
「あります!」田中さんは根岸佐伯に向かって答えた。
根岸佐伯は驚愕し、興奮で赤くなっていた顔が一瞬で青ざめた。
「私の携帯に入っています。」田中さんは再度断言した。
田中さんは携帯を取り出し、画面を指でタップした。
鈴木知得留は藤田文に取りに行くよう指示した。
田中さんは携帯を藤田文に渡し、藤田文は中の録音を確認して、データケーブルでスピーカーに接続し、会場全体に根岸佐伯と田中さんの会話が流れ始めた。
「堕胎薬を私のいつもの参鶏湯に入れて。」根岸佐伯の声。
「はい。」
「幸子は信用できる?」
「大丈夫です。臆病な子なので、少し脅せば言うことを聞きます。」
「ここに2000万円あります。誰にも見つからないように気をつけて。鈴木知得留が有罪判決を受けて刑務所に入ったら、さらに2000万円を渡します。あなたの息子も海外留学に送ってあげます。」
「ありがとうございます、お嬢様。」田中さんの喜びを隠せない声。
「覚えておいて、必ず幸子に鈴木知得留が私を陥れたと言わせること。さもないと金はおろか、息子さんの東京での居場所もなくなるわよ。」