第120章 斎藤氏取締役会（1）（1更）

広々としたオフィス。

斎藤咲子は椅子から立ち上がった。

それでも村上紀文より背が低かったが、少なくとも気迫では負けていないと感じた。

彼女は言った。「あなたを警戒すべきかどうか、あなたはよく分かっているでしょう。男性一人くらいどうってことないわ。同じベッドで寝たってどうってことない！少なくとも、父のように不可解な死に方はしないわ。」

「斎藤咲子。」村上紀文は青筋を立てた。

「取締役会で会いましょう。」斎藤咲子は退出を促した。

「自分で恥をかくことになるぞ！」村上紀文は一言残して、手を振り払うように立ち去った。

斎藤咲子は彼の背中を見つめた。

彼がドアを閉める異様な音を聞いていた。

斎藤咲子は椅子に重々しく腰を下ろした。

恥？

彼と母親の会話を聞いた時ほど恥ずかしい思いをしたことはない。

あの感覚...心臓を刃物で刺されるような感覚、自分の思い込みが完全に裏切られた時の痛み。

彼女は冷淡に振る舞うことができた。

幼い頃からの性格のおかげで、どんなことにも無関心を装えることを、彼女は幸いに思った。

彼女は脇の電話を取った。「塩川秘書、ちょっと来てください。」

「はい。」

斎藤咲子は電話を切った。

塩川真は、父の個人秘書として長年仕えてきた人物だった。

週末に彼を訪ねた。

誰を頼ればいいか分からず、父が最も信頼していた人物として、彼が自分の味方になってくれることを願うしかなかった。

塩川真はノックをして入室した。

「斎藤さん。」

「お願いした取締役会の準備は整いましたか？」

「9時30分まで、あと10分です。」

「分かりました。」斎藤咲子は頷いた。

「斎藤さん。」塩川真は心配そうに、「この会議は、スムーズにはいかないかもしれません。」

「分かっています。」斎藤咲子は言った。「覚悟はできています。」

「はい。」塩川真はそれ以上何も言わなかった。

彼女自身が向き合わなければならないことがあるのだ。

斎藤咲子は深く息を吸い、塩川真と共に斎藤グループの最上階にある取締役会議室へと向かった。

大きな会議室のドア。

塩川真は彼女の方を振り返った。

斎藤咲子は頷いた。

塩川真は会議室のドアを開けた。

中から議論の声が聞こえていたが、ドアが開くと全員が静かになった。