夜は暗く、海は黒かった。
幸いなことに、先ほど彼らの後を追って海に潜っていた男は、彼らが高速ボートに乗ると思い込んで息継ぎのために顔を出したが、再び潜った時には彼らを見失ってしまった。海中の視界は極めて悪かったのだ。
道明寺華は鈴木知得留を連れて海中を泳ぎ続けた。
周囲では銃弾が飛び交い、さらに水に飛び込む音が聞こえてきた。
救助員もいれば、そうでない者もいた。
この状況では誰が誰だか判別できなかった。
鈴木知得留は道明寺華に引っ張られながら、彼女がどこへ連れて行こうとしているのか分からなかった。
実は彼女はクルーズ船に戻りたかった。
クルーズ船は第一グループの所有物で、第一グループが彼女を殺そうとするはずがない。そこなら安全なはずだった。
必死で道明寺華に合図を送ったが、華は一切応答せず、クルーズ船から離れる方向へ進み続けた。