軍艦の甲板の上。
周りは全て軍人だった。
鈴木知得留と上野和明は片隅に立っていた。
鈴木知得留は心配そうに尋ねた。「和明さん、足は大丈夫?」
「問題ない。心配しないで」上野和明は気にしていない様子だった。
「無理しないでね」
「これは小さな傷だよ。軍人なら怪我は避けられない」
「でも、今回は私のせいで…」鈴木知得留は自責の念に駆られた。
上野和明は彼女を見つめた。
この危険な旅のせいで、彼女の顔にも傷跡がいくつも残っているのを見た。
彼は唇を噛んで、視線を逸らした。
「知得留、話があるんだ」と彼は言った。
「うん」鈴木知得留は彼を見つめた。
「君のお父さんから連絡を受けて、君を探しに来たんだ。実は、お父さんも直接来たがっていたけど、ここは危険だと思って、家で待っていてもらうことにした」
「父が来なくて良かった」
上野和明は頷いた。
こんなに危険な場所に、年配の鈴木山を連れてくるわけにはいかなかった。
「日本国に着いたら、冬木空と北村忠に出会った。目的が同じだったから、一緒に君を探すことにした。ずっと冬木空は冷静で、君がいそうな場所や、どこに立ち寄るかを正確に分析していた。だから早く見つけることができた」
鈴木知得留は上野和明が何を言いたいのか分からなかった。
彼を褒めているのだろうか?
でも、そうでもないような気がした。
上野和明は続けた。「無人島では二手に分かれて、冬木空と北村忠に一人一丁ずつ武器を渡した。彼らは使い方も聞かなかった」
それで?
「昨夜、冬木空と北村忠は死骸組織の一部を引き付けた。私たちは一晩かけて対峙していた死骸を片付けて、冬木空を探しに行った時、彼は一人で3人の死骸を倒していた。最後に彼が倒した死骸は、今回の首領で、裏社会では有名なスレイト、通称喰いの王だった。彼は幼い頃に奴隷として売られ、後に十数人の奴隷と共に反乱を起こして逃亡し、その後は地下格闘技で生計を立てていた。命知らずだったから、ほぼ無敗だった。そんな戦歴が、ある謎の組織の目に留まったらしい。その後、スレイトが再び現れた時には、恐怖分子となっていて、その名を聞くだけで人々は恐れおののいた」
鈴木知得留は唇を噛んだ。