第147章 あと少しだけ(5更)

冬木空は彼女をきつく抱きしめ、隙間なく密着させた。

しかし、彼の体中は傷だらけだった。

彼女は初めて、冬木空の感情を感じ取った。

こんなにも明らかな、抑制の利かない、隠すことのない感情を。

鈴木知得留は少し驚いた。

最初から最後まで、無人島での出会いと別れ、そして再会を通じて、彼女が見てきた冬木空は冷静で落ち着いていて、安定感があった。強い安心感を与えてくれる存在ではあったが、結局のところ彼も一人の人間で、血の通った喜怒哀楽のある普通の人間だった。彼女も冬木空の緊張を感じたかった、冬木空の愛情を感じたかった……そして今この瞬間、彼女はそれを強く感じていた。

前世での二人の親密さは耐え難い苦痛だった。

今世では、自分の最高の全てを彼女に捧げたい。

「知得留……」ドアの所で、突然男性の声が響いた。

熱い想いに浸っていた二人は、体が硬直した。

互いに離れた。

「すまない、ノックはしたんだが、聞こえていなかったようだ」上野和明は言って、部屋を出て、ドアを閉めた。

二人はまだ見つめ合っていた。

おそらく……

冬木空は軽く唇を噛んだ。

鈴木知得留は「続きができるわ」と言った。

しかし冬木空は身を屈めて、彼女の服を整えてやった。

鈴木知得留は不満そうに彼を見つめた。

「上野和明は用事があるんだろう」と冬木空は言った。

鈴木知得留は唇を噛んだ。

「行っておいで」

鈴木知得留は立ち上がり、冬木空のベッドから離れた。

冬木空は彼女の後ろ姿を見つめ、その瞬間、瞳が鋭く引き締まった。

彼は拳を強く握りしめた。

今回の事故は、二度と鈴木知得留に起こさせない。

そして彼は、相手がここまでやるとは予想していなかった!

「空」大きく開いたドアから、北村忠が気軽に入ってきた。

冬木空は彼を見つめた。

北村忠は胸が締め付けられた、「俺、何か悪いことした?」

表情がこんなに悪い。

「何の用だ?」

「用事がないと会いに来ちゃいけないのか?」北村忠は不満そうだった。

「休みたい」

「今や俺たちは生死を共にした仲だぞ」北村忠は不機嫌だった。

冬木空のために、死にかけたというのに。

こいつはまだこんなに冷たい態度を取れるのか。

「そんな関係でなくても、お前の存在は変わらない」冬木空は率直に言った。