冬木空は彼女をきつく抱きしめ、隙間なく密着させた。
しかし、彼の体中は傷だらけだった。
彼女は初めて、冬木空の感情を感じ取った。
こんなにも明らかな、抑制の利かない、隠すことのない感情を。
鈴木知得留は少し驚いた。
最初から最後まで、無人島での出会いと別れ、そして再会を通じて、彼女が見てきた冬木空は冷静で落ち着いていて、安定感があった。強い安心感を与えてくれる存在ではあったが、結局のところ彼も一人の人間で、血の通った喜怒哀楽のある普通の人間だった。彼女も冬木空の緊張を感じたかった、冬木空の愛情を感じたかった……そして今この瞬間、彼女はそれを強く感じていた。
前世での二人の親密さは耐え難い苦痛だった。
今世では、自分の最高の全てを彼女に捧げたい。
「知得留……」ドアの所で、突然男性の声が響いた。
熱い想いに浸っていた二人は、体が硬直した。
互いに離れた。
「すまない、ノックはしたんだが、聞こえていなかったようだ」上野和明は言って、部屋を出て、ドアを閉めた。
二人はまだ見つめ合っていた。
おそらく……
冬木空は軽く唇を噛んだ。
鈴木知得留は「続きができるわ」と言った。
しかし冬木空は身を屈めて、彼女の服を整えてやった。
鈴木知得留は不満そうに彼を見つめた。
「上野和明は用事があるんだろう」と冬木空は言った。
鈴木知得留は唇を噛んだ。
「行っておいで」
鈴木知得留は立ち上がり、冬木空のベッドから離れた。
冬木空は彼女の後ろ姿を見つめ、その瞬間、瞳が鋭く引き締まった。
彼は拳を強く握りしめた。
今回の事故は、二度と鈴木知得留に起こさせない。
そして彼は、相手がここまでやるとは予想していなかった!
「空」大きく開いたドアから、北村忠が気軽に入ってきた。
冬木空は彼を見つめた。
北村忠は胸が締め付けられた、「俺、何か悪いことした?」
表情がこんなに悪い。
「何の用だ?」
「用事がないと会いに来ちゃいけないのか?」北村忠は不満そうだった。
「休みたい」
「今や俺たちは生死を共にした仲だぞ」北村忠は不機嫌だった。
冬木空のために、死にかけたというのに。
こいつはまだこんなに冷たい態度を取れるのか。
「そんな関係でなくても、お前の存在は変わらない」冬木空は率直に言った。