第147章 あと少しだけ(5更)

冬木空は彼女をきつく抱きしめ、隙間なく密着させた。

しかし、彼の体中は傷だらけだった。

彼女は初めて、冬木空の感情を感じ取った。

こんなにも明らかな、抑制の利かない、隠すことのない感情を。

鈴木知得留は少し驚いた。

最初から最後まで、無人島での出会いと別れ、そして再会を通じて、彼女が見てきた冬木空は冷静で落ち着いていて、安定感があった。強い安心感を与えてくれる存在ではあったが、結局のところ彼も一人の人間で、血の通った喜怒哀楽のある普通の人間だった。彼女も冬木空の緊張を感じたかった、冬木空の愛情を感じたかった……そして今この瞬間、彼女はそれを強く感じていた。

前世での二人の親密さは耐え難い苦痛だった。

今世では、自分の最高の全てを彼女に捧げたい。

「知得留……」ドアの所で、突然男性の声が響いた。