その時。
その人が木の葉を押しのけ、お互いがまだ相手の姿もはっきり見えないその瞬間、道明寺華は突然飛び出し、その人を一気に押さえつけ、強く拘束した。鈴木知得留は骨の軋む音を聞いたような気がした。
その男は痛みで大声を上げた。「あっ……」
「華!」見覚えのある声が突然響いた。
鈴木知得留と道明寺華はその瞬間、声のする方向に振り向いた。
そこには上野和明がいた。
上野和明は急いで近寄ってきた。「大丈夫か?」
道明寺華は明らかに興奮していた。
鈴木知得留は彼女があまり感情を表に出さないと思っていた。
この瞬間の道明寺華は、上野和明を見た途端、救世主を見るような表情をした。
道明寺華にも怖いときがあるのだ。ただ表現することを恐れているだけだった。
そして彼女の上野和明に対する信頼と依存は、自然と表れていた。