斎藤咲子は頭がくらくらしていた。
彼女は目を閉じていた。
その瞬間、ただ厚みのある抱擁を感じ、彼女は強く抱きしめられた。
彼女は抵抗しなかった。
そうしてその人に、かがんで腰を下ろして抱き上げられた。
今まで経験したことのないお姫様抱っこ。
村上紀文は斎藤咲子をベッドに寝かせた。
斎藤咲子は顔を真っ赤にして、おそらく酔いのせいで、この時目を閉じていた。
村上紀文は彼女をじっと見つめていた。
そして。
彼はベッドの布団を引き寄せ、彼女にかけてやり、立ち去ろうとした。
手が、突然誰かに掴まれた。
村上紀文の胸が高鳴った。
それは...制御できない心臓の鼓動だった。
彼の喉が波打ち、ずっと抑え込もうとしていた。
「そばにいて」と斎藤咲子は言った。
声は、とても小さく優しかった。