第170章 完全に違う自分に変わることを強いられて(1更)

斎藤咲子は頭がくらくらしていた。

彼女は目を閉じていた。

その瞬間、ただ厚みのある抱擁を感じ、彼女は強く抱きしめられた。

彼女は抵抗しなかった。

そうしてその人に、かがんで腰を下ろして抱き上げられた。

今まで経験したことのないお姫様抱っこ。

村上紀文は斎藤咲子をベッドに寝かせた。

斎藤咲子は顔を真っ赤にして、おそらく酔いのせいで、この時目を閉じていた。

村上紀文は彼女をじっと見つめていた。

そして。

彼はベッドの布団を引き寄せ、彼女にかけてやり、立ち去ろうとした。

手が、突然誰かに掴まれた。

村上紀文の胸が高鳴った。

それは...制御できない心臓の鼓動だった。

彼の喉が波打ち、ずっと抑え込もうとしていた。

「そばにいて」と斎藤咲子は言った。

声は、とても小さく優しかった。