鈴木山の事務所。
高橋透は電話を切ると突然口を開いた。「プロジェクトマネージャーの件は、変更の必要がなくなりました」
鈴木知得留と鈴木山は少し驚き、高橋透をじっと見つめた。
高橋透は言った。「先ほど野村松尾から電話があり、冬木グループが社内の事情により、今回の商業開発区の入札に参加しないという声明を発表したそうです。また、今回の開発区に参加できないことへの遺憾の意も表明されました」
鈴木知得留はかなり驚いていた。
鈴木山も同様だった。
なぜこんなに突然なのか。
開発プロジェクトは、もともと非常に収益性の高い案件だったのに、冬木グループはこんな大きな利権を手放すというのか?!
「つまり、冬木グループが自主的にこのプロジェクトを放棄したので、鈴木知得留は利害関係を避ける必要がなくなったということです」高橋透はこの結果に満足しているようだった。
冬木グループという大財閥が投資を諦めたとはいえ、このプロジェクトの将来性は非常に広く、現在入札している企業も多く、冬木グループがいなくても投資資金が不足することはなく、むしろ良い結果となった。
「プロジェクトは引き続きあなたが全権を持って担当してください。最終的な成果を楽しみにしています」高橋透は率直に言った。
鈴木知得留は微笑んで、「頑張ります。ありがとうございます、高橋会長」
「礼には及びません。これはあなたの実力です」
鈴木知得留は丁寧に挨拶を交わした。
高橋透も二言三言話してから、先に鈴木山の事務所を後にした。
事務所内で、鈴木山は鈴木知得留に向かって言った。「冬木家のおかげだ。でなければ、このプロジェクトを手放さなければならなかったところだ」
鈴木知得留は頷いた。
確かにそうだった。
「しかし、冬木家がこんな重要な時期に、なぜ突然声明を出したんだろう?」鈴木山は不思議そうだった。
鈴木知得留は言った。「さっき冬木空に会いに行ったんです。ただ単に気持ちを吐き出したかっただけで、同時に冬木空に解決策を考えてもらおうと思って。私にはどう対応すればいいのか分からなくて。まさか冬木空がこんな声明を出すとは思いもしませんでした」
本当に、身に余る光栄だった。
冬木空はいつも彼女に驚きを与えてくれる。大きな驚きを。