豪華な個室レストランの中。
斎藤咲子は佐藤隆を見つめながら、自分の目的をはっきりと伝えた。
佐藤隆も物思いにふける表情を浮かべていた。彼は本当に予想していなかった。斎藤咲子がこんな風に突然彼を訪ねてくるとは。それに、彼の印象に残っている生意気な小娘とは全く違っていた。彼女は随分と変わったようだ。自信に満ち、どこか説得力のある人物になっていた。
しかし、彼はそれを決して表に出すことはなかった。どう考えても斎藤咲子は新参者で、彼女の今後の展開は予測しがたいものだった。
斎藤咲子は佐藤隆が黙っているのを見て、自ら口を開いた。「佐藤取締役、すぐにお返事をいただく必要はありません。皆様にはご懸念があることは承知しています。私はまだ職場に入ったばかりの新人ですから、私に対する不信感も理解できます。ただ、私に自分を証明する機会を一度だけでも与えていただきたいのです。少なくとも、皆様に成果を見せられるようにさせてください。もし皆様が設定された期間内に要求を満たせなければ、その時点で否定していただいても遅くはありません。」
佐藤隆は斎藤咲子を見つめながら、ゆっくりと言った。「私は君のお父さんとも長年の付き合いがあってね。会社の関係以外にも、私的にも親友だった。君は彼の娘だ。彼が株式を全て君に残したからには、私も彼の選択を信頼すべきだろう。」
「ありがとうございます、佐藤取締役。」斎藤咲子は急いで言った。
「しかし、前もって言っておくが、もし君に本当に能力がないと判断した場合は、私は反対の立場を取る。これは私個人の利益のためだけでなく、君のお父さんとグループに対する責任でもある。斎藤家がここまで事業を大きくするのは容易なことではなかった。君の手で台無しにするのは実に惜しい。」佐藤隆は立派な言葉で語った。
斎藤咲子は頷いた。「分かっています。私も斎藤家の事業を台無しにしたくないからこそ、このようにグループの経営を引き継ごうとしているのです。佐藤取締役、ご安心ください。もし一年の間に何も成果を出せなければ、あなたが私を追い出す前に、私から辞任させていただきます。」
「その言葉があれば、今回は一度信用してみよう。」
「ありがとうございます。」斎藤咲子は再び急いで言った。