第168章 ファッション界のパーティー(1)社交を学ぶ

斎藤咲子の部屋の前。

閉ざされたドアの前に、村上紀文は長い間立ち尽くしていた。

彼はノックもせず、かといって立ち去ることもなかった。

斎藤咲子は、お風呂を済ませ、根岸峰尾が入浴している間に、外の空気を吸いに行こうとしていた。

ドアを開けると、村上紀文がそこに立っているのが見えた。

その突然の出来事に、村上紀文は一瞬呆然としてしまった。

呆然と、まっすぐに斎藤咲子を見つめていた。

斎藤咲子は、村上紀文がこんな風に自分を見つめたのがいつ以来なのか、もう覚えていなかった。

思えば、あの頃の眼差しさえも、嘘に満ちていたのだろう。

彼女の表情は冷ややかだった。

心も冷めきっていた。

彼に対して、憎しみ以外何も感じることができなかった。

以前は我慢できていたが、今はもう我慢する気も失せていた。

彼女は言った。「何がしたいの?」

村上紀文は今や普段の様子を取り戻していた。

もはや驚きの色も、執着の色も見せなかった。

彼は言った。「母の今日のことについて……」

「そう、私が彼女を殴ったわ」斎藤咲子は彼の言葉を遮った。「仕返しがしたいの?」

村上紀文は薄い唇を固く結んだ。

斎藤咲子に対して、感情を抑えることも、冷静に対応することも難しかった。

今の斎藤咲子はまるでハリネズミのように、全身がトゲで覆われ、全身が……傷だらけだった。

彼は言った。「これからはこういうことは起こらないと伝えたかった。」

「ふん。」斎藤咲子は笑った。憎しみが深ければ深いほど、その笑みは皮肉に満ちていた。彼女は言った。「あなたの言葉なんて、句読点一つだって信じないわ。でも、今日のお母様の件について言及したからには忠告しておくわ。父の面子を考えて今回は大目に見るけど、次に同じようなことがあったら、お母様の不倫写真や動画をネットに流して、世間の皆さんに見てもらうことになるわよ!」

「斎藤咲子。」村上紀文は彼女の名を激しく呼んだ。

斎藤咲子は冷たく言い放った。「言った通りにするわ!」

そう言うと。

斎藤咲子は部屋に戻ろうとした。

たとえ根岸峰尾がまだ風呂から出ていなくても、たとえ部屋の中が気まずい雰囲気になったとしても、村上紀文と向き合うよりは百倍マシだった。

村上紀文を……一目見るだけでも吐き気がした。

「斎藤咲子。」村上紀文は突然彼女の腕を掴んだ。