第163章 甘い幸せが溢れる(3話目 愛の抱擁を求めて)

翌日。

鈴木知得留は目の下にクマを作って出勤した。

昨夜は...幸せ感が強すぎて、少し遅くまで寝られなかった。そのせいで朝起きた時は少し恐ろしい顔になっていた。

幸い、この世界には女性に最も優しいものがある。化粧品だ。

メイクをすると、だいぶ元気そうに見えるようになった。

道明寺華の小さな車に乗っている。

道明寺華は無口で、運転中はいつも真剣な表情をしている。

「華」と鈴木知得留が呼びかけた。

「うん」

「私、もうすぐ結婚するの」

「知ってる」と道明寺華は答えた。

おそらく、道明寺華は結婚が一体何を意味するのか分かっていないだろう。

鈴木知得留も詳しく説明はしなかった。

彼女は直接的な問題を切り出した。「結婚したら鈴木邸を出て冬木空と一緒に住むことになるんだけど、あなたは...私と一緒に住む?それとも私の近くで家を探して住む?」

道明寺華は無頓着に「どちらでも」と答えた。

「まずは一番近い場所がどこにあるか探してみるわ」と鈴木知得留は言った。

彼女と冬木空二人の場所では、道明寺華が気まずくなるかもしれないと心配したからだ。

もっとも、この子は気まずさすら分からないかもしれないが。

とにかく...

鈴木知得留は窓の外を見ながら、薄く微笑んだ。

幸せは突然やってきた。

自然な成り行きだと思っていたことが、実際に訪れた時、こんなにも心を揺さぶられるとは思わなかった。

車は商業管理ビルの前にスムーズに停車した。

鈴木知得留は車を降り、タイムカードを押した。

昨日は長期間出勤していなかったため、注目を集めた。

今日は注目を集めた...それは彼女がトレンド入りしたからだ。

鈴木知得留は明らかに商業管理部のスター的存在だった。仕事能力も、プライベートも。

多くの視線を浴びながら、ようやく企画部のオフィスに入った。

オフィスの全員が彼女を見つめていた。

誰かが突然「鈴木知得留さん、おめでとう!」と声をかけた。

すると、部屋中から「おめでとう」の声が上がった。

鈴木知得留は少し照れながら、一つ一つ返事をした。

オフィスは珍しく賑やかな雰囲気に包まれた。

鈴木知得留が振り向くと、楠木観月の姿が目に入った。

楠木観月は陰鬱な表情をしていた。