暗い斎藤邸。
村上紀文は薬箱の中から胃薬を探り当てた。
胃薬はほとんど彼が飲んでいたので、何錠か減っているのがよく分かった。
振り向いて口を開こうとした時。
斎藤咲子はすでに去っていた。
村上紀文は唇を軽く噛み、薬を取り出し、水で飲み込んだ。
胃薬はすぐには効かないが、徐々に症状が和らいでいく。
一歩一歩部屋に戻り、ベッドに横たわった。
天井を見つめながら、なぜか呆然としていた。
いつか、斎藤咲子も自分のようになってしまうのだろうか!
翌日。
村上紀文が起床した時、斎藤咲子はすでに根岸峰尾を連れて邸を出ていた。
昨夜は結局なかなか眠れなかった。胃の痛みのせいなのか、考え事が多すぎたのか分からないが、幸い今朝は胃の具合もよくなり、全体的に少し元気になっていた。
階下に降りる。