斎藤グループの社長室にて。
斎藤咲子は村上紀文を見つめていた。
村上紀文は彼女のことを「社長」と呼んだ。
口調に表れていなくても、どこか皮肉めいて聞こえた。
彼女は数秒黙り込んだ。確かに自分が感情的になりすぎていたと感じた。グループを本当に掌握するためには、何事も客観的で冷静でなければならないことは分かっていた。村上紀文のように、彼女を殺したいほど憎んでいても、この瞬間は自ら彼女を訪ねてくるのだ。
「10分」と彼女は言った。
「ありがとうございます」と村上紀文は率直に答えた。
斎藤咲子は唇を噛んだ。
今日の村上紀文は...何か変だった。
どこか不可解な感じさえした。
根岸峰尾はすでに下がっていた。
村上紀文は斎藤咲子の前に座り、「これはゴルフリゾートの提携案です。この提携案は以前あなたに署名してもらった提携協定とは異なります。協定には主に制約条項が記載されていますが、実際の提携内容はこの中にあります。内容は多岐にわたりますので、ゆっくりご覧ください」