第212章 反撃を学ぶ(5)渡辺菖蒲を痛烈に皮肉る

優美なレストラン。

村上紀文は煙草の吸い殻を消した。

彼は携帯の画面に表示された着信を見つめた。

母からだった。

彼が外に出ていた時間は少し長かったようで、隣の灰皿には吸い殻が何本も増えていた。

彼は直接電話を切った。

喫煙所を出た。

ホールに入ると、冬木郷とばったり出くわした。

冬木郷はトイレに行く途中で、こうして村上紀文と出会った。

彼は眉をひそめた。

この男はタバコを吸いすぎだ。

何か言おうとする前に、村上紀文は彼の横を通り過ぎて行った。

冬木郷は村上紀文の後ろ姿を見つめた。

正直に言うと。

彼は本当にこの男が嫌いだった。

一人の女性に執着するなんて、軽蔑せずにはいられなかった。

村上紀文は大股で歩き、斎藤咲子のテーブルの前を通り過ぎたが、彼女は気付かなかった。