優美なレストラン。
村上紀文は煙草の吸い殻を消した。
彼は携帯の画面に表示された着信を見つめた。
母からだった。
彼が外に出ていた時間は少し長かったようで、隣の灰皿には吸い殻が何本も増えていた。
彼は直接電話を切った。
喫煙所を出た。
ホールに入ると、冬木郷とばったり出くわした。
冬木郷はトイレに行く途中で、こうして村上紀文と出会った。
彼は眉をひそめた。
この男はタバコを吸いすぎだ。
何か言おうとする前に、村上紀文は彼の横を通り過ぎて行った。
冬木郷は村上紀文の後ろ姿を見つめた。
正直に言うと。
彼は本当にこの男が嫌いだった。
一人の女性に執着するなんて、軽蔑せずにはいられなかった。
村上紀文は大股で歩き、斎藤咲子のテーブルの前を通り過ぎたが、彼女は気付かなかった。