鈴木知得留は青木太一の住居から父を送り届けた後、道明寺華と一緒に冬木空との新居に戻った。
家の患者に対して、やはり心が痛んだ。
彼女は家に入った。
冬木空は一人で屋上の空中庭園に座っていた。
正午で暑くなってきているのに、彼はまだそこに一人で座っていて、どこか寂しげに見えた。
鈴木知得留は彼の後ろ姿を見つめていた、その瞬間ただ見つめていた。
理屈の上では、冬木空は金の匙をくわえて生まれ、欲しいものは何でも手に入り、自身の条件も良く、天の寵児と言えるはずだった。
なのに、なぜ?
彼の全体から寂寥感と哀愁が漂っているように感じた。
まるで多くの辛い経験を重ねてきたかのように、思いは重く、後ろ姿は寂しげだった。
彼女の胸が波打った。
なぜか、こんな感慨を覚えるのか分からなかった。