鈴木知得留は青木太一の住居から父を送り届けた後、道明寺華と一緒に冬木空との新居に戻った。
家の患者に対して、やはり心が痛んだ。
彼女は家に入った。
冬木空は一人で屋上の空中庭園に座っていた。
正午で暑くなってきているのに、彼はまだそこに一人で座っていて、どこか寂しげに見えた。
鈴木知得留は彼の後ろ姿を見つめていた、その瞬間ただ見つめていた。
理屈の上では、冬木空は金の匙をくわえて生まれ、欲しいものは何でも手に入り、自身の条件も良く、天の寵児と言えるはずだった。
なのに、なぜ?
彼の全体から寂寥感と哀愁が漂っているように感じた。
まるで多くの辛い経験を重ねてきたかのように、思いは重く、後ろ姿は寂しげだった。
彼女の胸が波打った。
なぜか、こんな感慨を覚えるのか分からなかった。
彼女は近づいていった。
冬木空は足音を聞いたようで、振り返った。
振り返った瞬間、口元に微笑みを浮かべていた。
彼女が見た悲しみなどどこにもなく、むしろ眩しいほどの輝きを放ち、春風のように晴れやかだった。
「帰ってきたのか」と冬木空が尋ねた。
「うん」と鈴木知得留は頷いた。
「どうだった?」
「何がどうだったの?」鈴木知得留は冬木空が何を言っているのか知らないふりをした。
「秋山静香を説得できたのか?」冬木空は怒る様子もなく、優しく尋ねた。
鈴木知得留は冬木空の隣にしゃがみ込んで、「どうしてわかったの?」
「表情を見ればわかる」
「冬木空」鈴木知得留は真っ直ぐに彼を見つめた。「あなたはいつも人の心が読めるみたい。読心術でもあるの?それとも何か特別な能力?他人が何を考えて何をしたのかすべてわかるのに、あなたが何を考えて何をしているのか、私たちにはわからない」
冬木空の美しい唇が上がり、手を優しく彼女の頭に置いた。まるで小動物を撫でるかのように。
鈴木知得留は不機嫌になった。
冬木空は美しく笑って、「安心して、私は子供をいじめたりしない」
「誰が子供よ!」鈴木知得留は反論した。「あなたは私より3歳年上なだけじゃない。年寄りぶらないで!」
冬木空はただ笑っていた、国も傾くほどの美しい笑顔で。
鈴木知得留は時々本当に彼の笑顔が怖かった。
心が揺らいでしまうから。
彼女は立ち上がって去ろうとした。
「奥様」冬木空が呼び止めた。