心臓の具合が悪いということは、軽く考えてはいけないことだ。
実際。
塩川おじさんが言わなければ、彼はほとんど忘れていた。
冬木空はベッドに横たわったまま、塩川おじさんが何度も繰り返す医師の指示を聞いていた。
塩川おじさんが繰り返し説明するのは、彼があまり聞き入れていないからだった。
彼は今も実際に聞いていなかった。考えていたのは、心臓の具合が悪いということだけだった。
あの事故で、確かに彼は重傷を負った。
18歳の時、一見事故に見えて実は事故ではない車の衝突事故に遭った。その事故で傷ついたのは下半身ではなく、心臓だった。救急搬送された時、主治医は塩川おじさんで、何度も危篤状態を告げられたが、最終的に彼は生き延び、それも元気に。
そのときから、彼は塩川おじさんと親交を持つようになり、さらに天才的だが人前にあまり姿を見せない息子の塩川実とも知り合った。
塩川おじさんは常に彼のことを医学の奇跡だと考えていた。
病院に搬送された時点でほぼ死亡宣告されていたのに、彼の強い生命力が最後の脈動を維持し、冬木空の体の状態では心臓バイパス手術は不可能だと思われた時も、驚くべきことに彼は耐え抜き、少しずつ、瀕死の状態から今の元気な姿にまで回復した。
さらに、この手術の後、彼の心臓は普通の人と同じように、この何年もの間ますます強くなっていった。
だから、彼が実は心臓に怪我をしていたことを忘れやすい。
とても重い怪我を負っていたのに。
当時の塩川おじさんは、冬木空が死ぬかもしれないという覚悟で次々と大手術を行い、生きた人間を実験台にするような気持ちで彼を救った。
あの頃を思い出すと、塩川おじさんが冬木空を見る目は、長い間「こいつは実験台だ」というような目つきだった。息子も同じだった。
息子が冬木空と深い付き合いを持つようになったのは、完全に冬木空の通常とは異なる体の構造を研究するためだったと言える。
それでも何年経っても、何も発見できなかったが。
実際、彼は普通の人間だった。
「私の話を聞いているのか?」塩川おじさんが尋ねた。
冬木空は目を上げた。
「まあいい、好きにしろ!」塩川おじさんは立ち去った。
どうせ、何を言っても冬木空は聞かないのだから。
そして、これだけの年月、冬木空は元気に生きている。
彼も余計な心配をしているだけだ。