第235章 村上紀文、お前は斎藤咲子のことが好きなのか!(3)

斎藤邸。

この時間はそれほど遅くはなかったが、決して早くもなかった。

夜空には星が輝いていた。

満天の星々が村上紀文の異常な行動を見つめていた。

斎藤咲子の抵抗は、あまりにも無力だった。

彼女の口は村上紀文の手で塞がれ、声を出すことができず根岸峰尾を呼ぶこともできなかった。彼女の体は玄関脇の壁に押し付けられ、もがくたびに背中が傷つくばかりだった。

彼は酔っているのかもしれない、と彼女は思った。

アルコールの臭いが体中から漂っていたから。

いや、酔っているわけではなく、ただ復讐したいだけなのかもしれない、と彼女は思った。

今の彼女が幸せに暮らしているから。

彼と彼の母親は、彼女に少しでも幸せがあることを許せないのだ。

だから彼女の全てを破壊しようとしているのだ。

彼女は慣れていた。