第236章 私が斎藤咲子を好きじゃないと言っても、信じますか?!

「村上紀文、はっきりと答えなさい。あなたは斎藤咲子のことが好きなの!」

別荘全体に渡辺菖蒲の怒鳴り声が響き渡っていた。

斎藤咲子は冷ややかな目で目の前の母子を見つめていた。

「答えなさい!」

村上紀文の沈黙に、渡辺菖蒲の怒りは更に激しさを増した。

彼女の声は既に掠れんばかりだった。

その瞬間、村上紀文は言った。「そうだ、俺は斎藤咲子が好きだ!」

そう。

俺は斎藤咲子が好きだ。

ふん。

嘘でしょう。

斎藤咲子は村上紀文を見つめた。

彼の耐え忍ぶ表情に、この瞬間、母親に追い詰められて青筋が浮き出ているのが見えた。

そして彼が「俺は斎藤咲子が好きだ」と言った言葉は、とても真剣で確信に満ちていた。

一瞬、斎藤咲子は本当なのかもしれないと思った。

村上紀文は本当に彼女のことを好きなのかもしれない。