第237章 人員削減の波乱、斎藤咲子が村上紀文を謀る(2番目)

斎藤グループの本社ビル。

秘書が村上紀文のオフィスのドアをノックした。

「入れ」

秘書がドアを開けて入った。

その瞬間、自分の目を疑った。

あの超ワーカホリックの部長が、パソコンを開かずにずっとスマホを見ていて、暇そうにしていた。

そして、スマホを見る表情も妙だった。

良いとも悪いとも言えず、まるで普通のニュースを見ているようでいて、でも、そう普通でもないような。

秘書が恭しく近づいた時、部長の画面に大きな写真が映っているのが見えた。社長と婚約者が親密にキスをしている写真で、実は今日、グループ全社員が見ていて、密かに噂話をしていた。昨日の午後、多くの人が社長と婚約者がデートしているのを見かけ、今朝こんな甘い記事が出て、独身者をいじめる展開になっていた。

その時の彼女の視線に気付いて、スマホを見ていた人が顔を上げた。

秘書はハッとして、すぐに視線を外し、もう一度見ることもできなかった。

心の中で、また叱られると思った。

しかし、部長は全く反応せず、ただスマホを静かに横に置き、むしろ親しみやすい口調で彼女に尋ねた。「この写真をどう思う?」

「え?」秘書は驚いた。

部長がこんな噂話に興味を持つなんて。

「関係はどうだと思う?」

秘書は心が疲れた。

部長の言葉は全て推測しないといけないのか。

関係?

どんな関係?

彼女は弱々しく言った。「部長は、社長と婚約者の関係がどうかと私に聞いているんですか?」

「ああ」村上紀文は淡々と答えた。

秘書はホッとした。人の心を推し量るのは本当に疲れる。彼女は真面目に答えた。「とても仲が良さそうです。今日は会社中の人が社長の噂で持ちきりで、既婚女性を含む90%の女性が羨ましがっていました」

「そうか」村上紀文は呟いた。

その時、秘書には彼が自分に話しかけているようには思えなかった。

彼女は察して、何も言わなかった。

「用件は何だ?」

秘書はすぐに我に返った。

ここ数日の部長の様子の異常さで、彼女まで神経質になっていた。彼女は言った。「先ほど連絡がありまして、午前10時に、社長が幹部会議を開催するので、定刻にご出席くださいとのことです」

「議題は?」村上紀文は何気なく尋ねた。

「明言されていません。幹部全員の出席を求められています」

「わかった。下がっていい」

「はい」