第237章 人員削減の波乱、斎藤咲子が村上紀文を謀る(2番目)

斎藤グループの本社ビル。

秘書が村上紀文のオフィスのドアをノックした。

「入れ」

秘書がドアを開けて入った。

その瞬間、自分の目を疑った。

あの超ワーカホリックの部長が、パソコンを開かずにずっとスマホを見ていて、暇そうにしていた。

そして、スマホを見る表情も妙だった。

良いとも悪いとも言えず、まるで普通のニュースを見ているようでいて、でも、そう普通でもないような。

秘書が恭しく近づいた時、部長の画面に大きな写真が映っているのが見えた。社長と婚約者が親密にキスをしている写真で、実は今日、グループ全社員が見ていて、密かに噂話をしていた。昨日の午後、多くの人が社長と婚約者がデートしているのを見かけ、今朝こんな甘い記事が出て、独身者をいじめる展開になっていた。

その時の彼女の視線に気付いて、スマホを見ていた人が顔を上げた。