華やかな夜のVIPルーム。
冬木心が到着した時、最初に目に入ったのは北村忠だった。彼が人混みの中で特に活発に動き回っているのが見えた。
弟の婚約パーティーなのに、なぜ彼がこんなに興奮しているの?!
彼女は本当に北村忠のすべてが嫌いだった!
彼女は向きを変え、端の方に座った。
暗がりの中で道明寺華に気付かなかったが、彼女は今、自分の隣に座っていた。
冬木心は少し驚いて、「ここにいたの?」と聞いた。
「うん」道明寺華は頷いた。
「兄と義姉は来てるの?」弟が兄は呼んでいないと言っていたはずなのに。
「北村忠について来ただけ」道明寺華は率直に答えた。
冬木心は納得した。
少し考えてから、「北村忠とは仲がいいの?」と尋ねた。
「良くない」道明寺華は正直に答えた。
「じゃあなぜ彼について来たの?」
「彼が酔っ払うから送って欲しいと言ったから」道明寺華は答えた。
冬木心は彼女を見つめた。
道明寺華も同じように見返した。
そして二人には共通の話題もなく、お互いに視線を逸らした。
そのとき、冬木郷が人混みの中から近づいてきた。顔中笑みを浮かべて、「姉さん、来てくれたんだ」
「うん」冬木心は頷いた。「気をつけて、飲みすぎないでね」
「今日は本当に嬉しいんだ」
「そうみたいね」
「本当に、こんなに早く婚約して、そしてすぐに結婚することになるなんて思ってもみなかった」冬木郷は喜びを隠せず、道明寺華までその雰囲気に感染された。
人が本当に幸せな時というのは、きっとこんな感じなのだろう。
北村忠のようじゃなくて!
彼女は人混みの中で非常に活発で人気者に見える北村忠を見つめた。彼が明るく笑っているのを見ながら、なぜか本当は幸せではないような気がした。でなければ、なぜあんなに大量にお酒を飲むのだろう。
酒は憂さ晴らしだと聞く。
「姉さん」冬木郷は親しげに冬木心の肩にもたれかかった。
おそらく少し酔っているのだろう、今こんなに甘えている。
冬木心も彼を押しのけはしなかった。
兄妹の仲は実際良好だった。
「実は北村忠さんって本当にいい人なんだ」冬木郷はつぶやいた。
冬木心はその時、狂ったように飲んでいる北村忠の方をちらりと見た。
彼女は言った。「彼がどんなにいい人でも、私には関係ない」