井上明は北村雅の露骨な褒め言葉を聞いて、心の中では得意げでしたが、表情は謙虚そのものでした。
「叔父さん、お褒めに預かり光栄です。忠は実は賢いんです。ただ感情的すぎるだけで」と彼は言いました。
北村雅は首を振って、「あいつは会社のことなど全く考えていないんだ」
「では叔父さん、ニュースの件は私が手配しましょうか」
「いや」北村雅は突然ため息をつきました。
井上明は信じられない様子で彼を見つめ、「叔父さんもこれが一石二鳥だとご存知のはずです」
「もし私がそうしたら、忠は一生私を恨むだろう」北村雅は諦めた様子で、「もういい、好きにさせておこう」
井上明の表情が一瞬にして曇りました。
つまり、これほど長い間。
彼は忠実に北村雅に従い、へつらってきたのに、彼の心の中では、やはり息子が一番大切なのだ。
彼の心の中では、息子が何をしても許されるのに、自分はただの使用人に過ぎない。
彼の内心は憎しみで満ちていました。
北村雅が口を開いた。「明、自分の仕事に集中しなさい。役立たずの従弟のことは気にするな」
「はい」井上明は頷きました。
彼は立ち去りましたが、表情は最後まで暗かったです。
これほど長い間、彼は北村雅の傍らで屈辱に耐えてきたのに、まだ北村忠には及ばない。あの何もできない北村忠にさえ及ばないのだ!
彼は納得できませんでした。
彼は電話を取り、かけました。「冬木心のニュースを風聞メディアに送れ」
「ボス?」
「誰にも知られないようにな!」
「はい」
井上明は電話を切り、口元に不気味な笑みを浮かべました。
北村雅にも北村忠にも負けるはずがない。
これで、北村忠はきっとこのニュースが北村雅の差し金だと疑うはずだ!
そうすれば、二人の対立は深まる。
北村雅はいずれ北村忠に完全に失望するだろう。そうなれば、北村系は彼のものになる!
一方、向かいのオフィスにいる北村忠。
今はまだ何も知らない様子でした。
彼は自分に関するニュースを見ながら、その注目度が徐々に上がり、村上紀文と斎藤咲子のニュースを追い抜きそうになっているのを見ていました。
彼は考えました。この時点でもう一押しすべきだと。
彼は電話を取り、遊び仲間に電話をかけました。「今夜飯を奢るから、お前らの女も連れてこい。クルーザーで遊ぼう」