第260章 婚約パーティー(3)彼女は一人でも大丈夫、誰も必要としない!(3番目の更新)

婚約披露宴の会場全体。

巨大な高精細スクリーンに、一本の動画が流れていた。

動画の中で、斎藤咲子は服装が乱れた状態で斎藤邸の正門前にいた。

動画の画質はそれほど鮮明ではなく、明らかにスマートフォンで撮影されたものだった。

そんな解像度でも、その人物が斎藤咲子であることは明らかで、そして彼女にキスをしていた人物は、冬木郷ではなかった……

会場全体が爆発したかのように騒然となった。

司会者は慌てて、スタッフに「止めて、止めて!」と叫んだ。

その慌てぶりが、会場をさらに混乱させた。

動画は突然切断された。

その瞬間、会場は逆に静まり返った!

全ての視線が、ステージ上の新郎新婦に注がれた。

斎藤咲子の手は、まだ冬木郷に握られていた。しっかりと握られていた。

しかしその瞬間、斎藤咲子は冬木郷の温もりを感じられなくなっていた。

彼女は唇を強く噛んだ。

彼女にはわかっていた。村上紀文が彼女を簡単には許さないということを。

しかし、彼がここまで卑劣な手段を取るとは思っていなかった。

この動画はいつ盗撮されたのだろう?

そうだ。

あの夜、村上紀文は酔っていると言った。酔っていたからこんなことをしたと言ったのだ!

実際は。

これは全て、その後の彼女への復讐のための計算だったのだろう。彼女を困らせ、恥をかかせ、これほど多くの人々の前で、顔向けできなくするために!

照明は依然として彼女に当たっていた。彼女の顔は真っ青だったが、その時泣くことはなく、強く立っていた。

宴会場は最初の静寂から、鴉雀無声となり、その後混乱に変わった。会場の全ての人々がスタッフによって丁寧に退場を促されていた。

誰も表立って何かを言うことはなく、婚約披露宴は中止となった。

村上紀文は群衆の中に立っていた。彼は遠くから斎藤咲子を見つめ、彼女の痩せた体が冬木郷の服をしっかりと掴んでいるのを見た。しかしそれは依存を求めているのではなく、ただ自分に強くあれと言い聞かせているだけだった。

彼は斎藤咲子が自分を必要としていないことを知っていた。むしろ今この瞬間、彼女は自分を殺したいとさえ思っているだろう。それでも彼はステージの中央に向かって歩き出した。

腕を、突然誰かに掴まれた。

村上紀文は振り返り、母親を見た。

「行ってはダメ!」渡辺菖蒲は一字一句はっきりと言った。