第272章 置き去りにされた道明寺華

東京の夏の夜、熱波が次々と押し寄せていた。

道明寺華は暑さにそれほど弱くはなかったが、生臭い海風の中、べたつく空気が不快に感じられた。目の前の男女たちは、この蒸し暑い夏の中でも、こんなにも騒がしく動き回っていた。

大きなヨットの上では、激しい音楽が流れていた。

20人ほどの人々が、全員水着姿でデッキの上で自由に体を揺らしていた。誰もが陶酔し、ハイテンションな様子だった。

道明寺華は脇に座り、お気に入りのスポーツウェアを着て、ただみんなを見つめていた。騒がず、ただそこにいるだけで、明らかに場違いな存在だった。

彼女は本当に退屈していた。

携帯の電池も切れていたが、充電する場所を探す気にもならなかった。

ずっと静かに脇に座り、北村忠が楽しそうに遊ぶ様子を見ていた。彼は少しも寂しさを感じていないようだった。